2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年2月18日

 ニューヨーク・タイムズ紙は1月17日付で「イランとの取引ゆえに、世界はより安全になった」との社説を掲載し、核合意の実施、制裁解除などを歓迎しています。社説の要旨は、次の通り。

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外交で達成された歴史的進歩

 多くの人が決して来ないと言ってきた時が来た。イランは2015年の米などとの核合意を履行した。その結果、世界はより安全になった。

 国際原子力機関(IAEA)は1月16日、イランが8.5トン以上の濃縮ウランをロシアに搬出し、1万2千以上の遠心分離機を廃棄し、プルトニウム製造用のアラクの原子炉にコンクリートを注ぎこんだことを確認した。

 1月17日、オバマ大統領は「イランが爆弾を作るすべての道を閉ざした」、イランとの関与が「重要問題の解決への窓」を開けた、中東での戦争によらず、外交でこの歴史的進歩が達成された、と述べた。

 今後も取引が厳格に守られることを確保するという難しい問題はある。その確保は米、ロ、中、欧州の義務である。イランは核施設について継続的なIAEA査察を受けるので、だますのは難しくなる。それに爆弾のための核物質を作ろうとしても1年以上かかる。合意の前には2~3か月でできた。

 この合意は忍耐強い外交、オバマ大統領の核問題を交渉により解決するとの先見の明ある決意の有効性の証明である。また、ロウハニ大統領とザリフ外相は核合意と履行を建設的態度で追求した。

恩赦が示す将来的な両国協力の可能性

 またWP紙のレザイアン特派員と他3人の釈放を祝うときでもある。米は制裁違反で逮捕されたイラン人7名を恩赦した。別に米国人1名も自由になった。紛争の解決には妥協がいる。これらは将来、米国とイランが協力する可能性を示す。

 イランは10名の米水兵(誤ってイラン領海にはいった2隻の乗組員)を釈放した。イランの強硬派の軍が2隻に乗り込み、捕らえられた水兵の写真を公開(たぶんジュネーブ条約違反)した。通常ならば、これは危機になっただろう。米国の強硬派はオバマとイランを非難しただろう。しかしケリー国務長官とザリフ外相の数回の電話の後、ハメネイは事件を解決しようとするロウハニとザリフを支持した。対決が核取引を危険にさらすと双方とも知っていた。

 もちろん、核合意の順守も米人の釈放も、イランがその他の国連決議や米国法違反で批判されないことを意味しない。拘束された米国人がイランを出た後、オバマはミサイル実験に関与した11のイラン企業と個人に制裁を課した。

 イラン批判者は、制裁解除でイランが1000億ドルの資金を得、地域の不安定化のために使うことを恐れている。しかしロウハニは来月の議会選挙を前に国民の生活改善を図ることに重点を置くだろう。

 このイランとの取引は北朝鮮交渉へのモデルでもありうる。

出典:‘A Safer World, Thanks to the Iran Deal’(New York Times, January 17 ,2016)
http://www.nytimes.com/2016/01/18/opinion/a-safer-world-thanks-to-the-iran-deal.html?partner=rssnyt&emc=rss&_r=0

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