今月の旅指南

2010年1月8日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

――エドソンコレクションの特徴は?

「花瓶梅図漆絵」 明治14年(1881)  板橋区立美術館

安村氏:漆の作品が中心となっていて、小ぶりだけど良質のものが選りすぐられています。デザイン性にすぐれ、粋で洒落た、是真のよさが溢れているものが多いですね。エドソン夫妻は見る目がありますね。日本人は作家の名前だけをみる傾向がありますが、外国人は名前を見ないで物自体を見る。本物を見抜く力があるんでしょう。

――今回の展覧会の見どころを教えてください。

安村氏:最初の4部屋はエドソンコレクションで、漆工の名品が展示されています。「柳に水車文重箱」は重厚な作品、「流水蝙蝠角盆」はサラッとした洒落た作品です。第5室は国内作品です。「瀬戸の意茶入」はどう見ても焼物ですが、竹に漆塗を施した“だまし漆器”。「花瓶梅図漆絵」は紫檀の板に見えますが、わずか450グラムです。驚きますよ。変塗に騙されるのを楽しんでください。ほかに、黒地に黒漆で描いた作品もあり、細かく見れば見るほどおもしろいですよ。東京国立博物館所蔵の「四季花鳥図屏風」など、代表的な大作も揃っています。福富太郎コレクションの「富士田子浦蒔絵額」は初公開。富士山に漆を塗り重ねている、厚みのなかに含まれた是真の技を見てほしい。

「雛飾り図」 江戸時代・19世紀 
個人蔵

絵画作品も軽妙洒脱ですよ。「蜘蛛の巣図」は、餌が引っかからないので、蜘蛛がとても寂しそうにうつろな目をしている。そこが可愛いんだよね。動物が可愛いのは四条派の特徴です。構図も洒落ています。「雛祭り図」は、普通は正面から描くものですが、斜めから描いている。遊び心がいっぱいですね。

会場である三井記念美術館(東京・日本橋)は願ってもない場所なんです。是真を支えたパトロンの旦那たちがいたのが日本橋ですから。もう1つの巡回展が開かれる京都は、是真が青春時代に最初の代表作(妙心寺塔頭・大雄院の襖絵)を描いたところ。是真にゆかりの深い2つの場所で展覧会を開くことができて幸運です。

――最後に今回の展覧会に寄せる安村さんの思いをお聞かせください。

安村氏:今から30年前の昭和55年、板橋区立美術館の江戸文化シリーズ第1回展で、是真を取り上げました。日本で戦後初の是真の総合的な展覧会でした。ところが、その後、出展作品はほとんど外国へ流れて行ってしまった。それだけ欧米人は是真に注目しているということです。しかし、日本にコレクターがいないため、いまだに外国に流れて行ってるんです。ですから僕は、今回の展覧会で是真の魅力を多くの人に伝え、ぜひ日本人に是真のコレクターになってほしいと願っています。


江戸の粋・明治の技──柴田是真の漆×絵
東京都中央区・三井記念美術館(東京メトロ銀座線三越前駅下車)
〈問〉03(5777)8600 ハローダイヤル
http://www.mitsui-museum.jp/index2.html

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