風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2009年12月31日

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野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

 3年間の幼稚園生活の中間点に当たるのが年中児の第2学期だ。この時期は風の谷幼稚園の教育活動に新たな、そして大切な目標が加わる時期でもある。その目標とは「仲間と一緒に物事に取り組み、力を合わせてそれを成し遂げる」という経験を通じて、子どもたちの心を育てていくことである。

 では心を育てるとはどういうことなのか。さっそく第2学期の最初のカリキュラムである「大型どうぶつ作り」を記した学級通信を見てみよう。

骨組み、シュロなわ付けともに、4人グループでつかえるかなづちは2本だけ。“いっしょにつくる”ということを体を通してわからせたいからです。なので、最初に出てくるのは“誰がかなづちで打つのか”という問題。
その問題でケンカになり、なかなか作り始められなかったのは翔太・美茉莉・遥菜・瑞稀グループ。
「ちょっと貸してよ!」「私も打ちたい!」
他のグループの子たちはくぎを打ち始める中、言い合いが続きます。するとかなづちが持てなかった翔太くん、急に立ち上がりどこかへ…。残った3人が打ち始めます。
確かに3人いれば、作業を進める上で困ることはありません。そのため、どんどんくぎを打ち続けていってしまう3人。
そこで「あれ? ここは3人でつくっているの? 4人のどうぶつなのにねえ」と一声かけると、先生の存在に気がついた翔太くんがすぐに駆け戻ってきて、「そうなの! やらせてくれないの!」と。
それに対して「違うでしょ! いなくなっちゃうんだもん!」「そうだよ! 順番って言ったのにさあ」と3人が応戦します。
「みんなそう思うんだったら、その気持ちを仲間にいわなきゃ。『やらせてよ』っていったり『4人のどうぶつなんだからいなくならないで』って言ったりできるといいんだけどな」
そう声をかけ、すぐさまその場から離れて様子を見ていると……
「みんなのどうぶつだからみんなでやろうよ」という遥菜ちゃんのひと言で、ようやく4人でつくり始めたのでした。                               鳥1組 学級通信 「おおばこ」より

「個人」での作業によって様々な力を身に付け、4歳児の2学期からは「みんなでいっしょに作る」ことを学んでゆく。

 幼稚園に入園してさまざまな活動を経験し、驚くほどのスピードで成長していく子どもたち。だが、実は仲間との共同作業を経験するのは「大型どうぶつ作り」が初めてだ。今までご紹介してきた年少児クラス、年中児クラスの第1学期の積み重ねがあったとしても、初めての共同作業が一筋縄ではいかない様子がお分かりいただけると思う。

 さて、この先どうなっていくのか? 今回から2週にわたって、「大型どうぶつ作り」に込められた奥深い教育意図と子どもたちの成長の様子をご紹介していこう。

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