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2016年7月21日

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吉田光宏 (よしだ・みつひろ)

ジャーナリスト

1954年広島県福山市生まれ。広島県立府中高校、中央大学を経て、新聞社記者に。1993年~94年米スタンフォード大学ナイトフェローシップ留学。20年間の新聞社勤務の後1999年に独立。国内外の自然環境保護、農林水産業などを取材&執筆している。日本環境ジャーナリストの会員、農政ジャーナリストの会会員。メディアコーディネーター、ビジネスプランナーも務める。著書に『農業・環境・地域が蘇る 放牧維新』(家の光協会)『広島県の農業を知るとカープを応援したくなる: 日本の農業は生き残れるのか』など。

 今年4月に施行された女性活躍推進法は、日本の社会で女性が活躍できていない現実の裏返しだろう。女性の労働条件の改善は「言うは易し、行うは難し」。だが、山口県岩国市玖珂町にあるカワトT.P.C.(代表取締役川戸俊彦)は、従業員280人のうち71%が女性。手作業で作る住宅用の設備配管は東京都内の新築マンションの3棟に1棟の割合で使われ、米ボーイング社の主翼に同社の部品が組み込まれているというユニークな企業。労働の時間や内容を女性たちが選択し、その責任も負うという、この会社の働き方が「女性を上手く使えば利益が増える」を証明しているようだ。

女子力を全開にする方法とは?(iStock)

男性不足を補う人事策

 筆者がこの会社のことを知ったのは今年2月、広島市で開かれた中小企業基盤整備機構主催の交流セミナーだった。講演で川戸社長は、「会社の運営は女性に任せています。口出ししても私が負けちゃうんです」と、経営者やコンサルタントなど約200人の出席者の笑いを誘った。話は進み、「女性4人から6人のグループによる責任作業」「工場長も現場責任者もいない」「地域の雇用を守ることが企業の使命」…。次々に明らかになる業態に驚きの声が何度もあがった。

 川戸社長が1989(平成元)年、山口県東部にある岩国市の郊外に有限会社川戸鉄工として創業、2002年に分社化するなどして現在に至る。本社を含む工場2カ所、加工センター2カ所(岩国市、千葉県)、4営業所のほか、国内唯一の配管ショールーム(東京都荒川区南千住)もある。「樹脂加工」と「金属加工」の2事業部で構成し、マンションの給水給湯の配管や水栓金具の部品を製造する。以前は建築現場で配管工が材料を持ち込み、組み立てていたが、カワトは自社工場でそれらの作業を済ませた「プレハブ配管」を現場に納入する。年間約6万戸分を出荷し、売上高38億9900万円(2015年3月期)。社員280人のうち、社員は227人、パート53人(2016年4月1日現在)。主力の樹脂加工事業部(222人)は80%、テクマック事業部(58人)の40%が女性で、全体で7割を占めている。

 軽作業が多いといえ、女性でなくてはならない理由は何なのか。川戸社長は創業時を振り返り「農村地域の地元では男性を雇用しようとしても、沿岸部のコンビナートなどに働きに出ているので、男性労働者の確保が難しかった」を明かす。

女性が多いカワト本社オフィス

 女性雇用を磐石にするために、出産、育児のほか、家事、介護などの主な担い手として期待されている不利な労働環境を改めてきた。

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