チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年1月20日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 アメリカのインターネット検索最大手のグーグルが、突然「中国での事業を続けるかどうか検証する」と発表し、中国市場から撤退する可能性があること示したのは1月12日のことだ。

 問題の発端は中国(グーグル側は政府だとしているが政府側は否定)が同社の運営する「Gメール」に対してサイバー攻撃を行い、その内容を勝手に覗いたという問題だった。中国で営業する検索サイトは検索結果を項目によって非開示にする自己規制を強いられてきたのだが、こうしたことへの不満がくすぶってきたところに新たな問題が持ち上がり、グーグル側が強く反発したのが経緯である。

天安門事件や共産党批判がネット上で丸裸に

 発表の翌日の欧米系メディアはこの問題を大々的に報じたが、興味深かったのは、そのとらえ方の多くは単なるグーグルという私企業と中国という対立ではなく、「インターネット・メディアが中国の挑戦を受けてその存在意義を問われている」という受け止め方だったことだ。

 中国市場では地元の検索サイトのシェアが圧倒的で、グーグルでさえ3割程度のシェアしか確保できていない現実も手伝い、他の欧米系企業もグーグルに追従するとの予測も流れたのだった。

 この原稿を書いている現在(1月20日)、グーグルは完全撤退をしないとしているが、中国側にとって頭が痛いのは中国当局の規制に挑戦するように、これまで実施してきた「自己検閲」を取りやめて、中国にとって都合の悪いテーマでの検索結果も表示し始めたことだった。つまり、現在の中国では見られなかった天安門事件に関するページや共産党批判のページ、ポルノサイトまでグーグルを通せばすべて画面に映し出されるのであって、いつまでも放置すれば今度は共産党側のルールが崩壊することになるのだ。そして一方では西側からの目があり、当然のことながら、グーグルをどう扱うかによって中国社会の「言論の自由」のレベルが問われてくるのである。

グーグル問題は中国にとって不穏の芽に

 西側社会が中国に言論の自由に関して注文をつけ、それに中国が反発するというのは、かつての東西対立を象徴するやり取りでもあった。その意味では既視感を覚えるのだが、現在の中国ではそれほど単純な話ではない。というのも、この対立構造が社会問題化した場合、西側的価値観に対する共産党という図式ではなく、むしろ国内問題化してゆく可能性を秘めているからだ。

 問題が起きた直後、CNNのゲストに呼ばれた専門家が語ったように、「インターネットは個人に力を与える役割を果たした」のであり、それを共産党があからさまに取り上げる行為に出ることは、中国でもいまや無視できない存在となった民意を敵に回しかねないことだからだ。

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