風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年4月8日

»著者プロフィール
著者
閉じる

野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

子どもたちは、「信号係、(電車が)つまってきているから赤にして」と声をかけあったり、「おい、もう駅員がいいって言ってるから“出発進行!”って言って」と運転手が車掌に声をかけています。まだ、それぞれの役割がはっきりとわからず、お互いの関連性も“なんとなく”の状態です。しかし、駅見学に行って現実を確かめた後は、その辺りの関連性をはっきりさせ、お互いの動きを意識しながら動いていけるようにしたいと思っています。
これが実は、簡単そうでとても難しく、そして電車ごっこの中で最も大事にしていることでもあります。
自分勝手にやっているだけでは上手くいかない、自分の役割をしっかりと果たしながら、全体を見て、仲間の動きと関連を持って動くことで、より面白くなるんだ、ということを実感していってくれたら、と思っています。                                 風2組 学級通信「麦」より

 今回も前回に引き続き「電車ごっこ」に秘められた教育意図をご紹介していこう。これは冒頭の学級通信からも読み取っていただけるように、「人と人とのつながり」を感じられる人間を育てることだ。しかし、「人と人のつながり」とひと言でいっても、風の谷幼稚園がその言葉で表現しようとしている概念は、実に幅広くて奥深い。まずはその内容の説明から始めよう。

「心が通い合う」ってどういうこと?

駅員、車掌、信号係・・・ 一人ひとりが自分の役割を果たし、他者との「つながり」を実感してゆく

 「人と人がつながる」という言葉の意味は、「ある人の存在が別の人に影響を及ぼすこと」と言い表すことができるだろう。そして、その「つながり」とは、「物的なつながり」と「心のつながり」に分けることができるのではないだろうか。

 「物的なつながり」とは、自分の行為が形となって他人に影響を及ぼすことだ。例えば、自分が腹を立てて人を叩けば、当然相手は痛い思いをする。あるいは、自分が共有物を壊せば、他の人が使えなくなって困る。あるいは、前回ご紹介したように、先生や父兄が週末に雑木林を開墾して自然の遊び場をつくれば、子どもたちはこの場所で気持ちよく伸び伸びと遊ぶことができる。このようなわかりやすい「つながり」だ。

 一方、「心のつながり」とは「心と心の通い合い」、つまり自分の心と他人の心が共感・共鳴していることを感じとれる感覚・感性だ。これは形となって表れにくいものだが、確かに存在しているだろう。そして、この感覚・感性があるからこそ、心の通い合う仲間をつくることができるのだ。

 「自分の思いが人に伝わったり、人の思いに触れたりするときに、『通じ合えた』という実感が持てること。こんな感性をもった子どもを育てたいと思っています。そして、『人と人との心の通い合い』を大切にする価値観を持った人間に成長していってほしいと思うのです」(天野園長)

 風の谷幼稚園が子どもたちに教えようとしているのは、実はこの両方の「つながり」なのである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る