ちょっと寄り道うまいもの

2010年4月23日

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 札幌に博多は当たり前。京都、神戸に天理と和歌山。岡山、笠岡、福山に尾道……。きりがないからこの辺にしよう。寿限無ではないが、書き出せば、それだけでこの誌面が終わってしまいそうだ。

 何のことか、もうお分かりだろう。そう、ご当地もののラーメンである。もとをただせば中華の麺が、地域の味と化している。百花繚乱。

 さすがにこの状況は、ラーメンだけが突出しているように思うが、意外な伏兵が追っていることに気付いた。餃子である。

 宇都宮や浜松が有名だが、ほかにもあちこちに。特に神戸にはなかなかにユニークなものがある、と聞いた。

 味噌をつけて食べる餃子。

 なに、それ?

 寡聞にして知らなかったが、神戸ではそれが普通なのだとか。味わいが想像つかないだけに、興味をそそられた。新幹線に乗った。

 「うちの祖父の工夫だと聞いています」

 というのが神戸の南京町にある「元祖ぎょうざ苑」三代目の頃末灯留〔ころすえとおる〕さん。戦前、旧満州にいた祖父、頃末芳夫が現地で覚えた餃子を気に入った。これは日本でも受け入れられるに違いないと確信し、戦後、引き揚げて神戸で店を始めたという。昭和26(1951)年。場所は変わったり、震災後復興したりという紆余曲折を経て、三代。今に至る。

 焼き餃子も当初から、だとか。餃子といえば餃子だけを食べる中国では、水餃子が一般的だが、ご飯のおかずを前提にした日本人は、焼き餃子のぱりっとした食感を好んだか。

元祖ぎょうざ苑の頃末灯留さん。祖父の製法を守り、美味で安心な餃子を供している

  ところで、味噌だれ。これも開店当時から、いや、それ以前に旧満州にいた頃から、そうやって食べていたと、灯留さんは亡くなる前に祖父から聞いている。

 新しい味と懐かしい味を合わせる工夫。異文化に暮らした経験があれば、分からぬこともないが、旧満州というところは、特異な錯綜した異文化の地だったから、余計にそのような工夫をしたものか。

 作り方から見せてもらうと、東京などで普通に食べている、餃子の皮よりも手作りのそれは軟らかい。わたしが、西安の家庭で教えてもらった水餃子と同じ感触。それを焼いた独特の食感。

 そして、味噌だれ。もとより味噌そのものではなく、味噌をベースにあれこれの企業秘密を加えて作ったたれである。それだけで食したり、お酢やニンニクを加えて好みの味を作ったりして食べていると、味噌味が当たり前だったのではと、既知感にとらわれる味。

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