2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月19日

 混迷する中東の紛争は中東の大国間の協力によってのみ解決されうるとの考え方と、他方で、中東の紛争は引き続き域外の大国の関与なしには達成できないとの二つの考え方があると言えます。この論評は、前者の考えに軸足を置くものです。正解は両者の考えの間にあります。より正確に言うと、第二の考え寄りの中間にあると考えられます。大国や国際社会の関与なしに中東は安定しません。今でもそれが中東の現実です。

 基本的に中東の大国はサウジ、エジプト、イラン、トルコです。その中でも今強い国益概念を以て行動しているのはイランとトルコでしょう。ここ10年トルコ・イラン関係は蜜月の時代だったと言われます。この二つの大国の協力は中東秩序にとり重要な要素であり、大きなインパクトを持ちます。筆者は、第一のステップとして、シリア、イラクにおける両国の利益調整のため双方の指導者の個人代表による協議チャンネルの設置を提案しています。更に北部イラクでイランがシーア民兵を抑える代わりにトルコはその地域から装甲車などの武器を撤収することを提案しています。

覇権的、自己中心的

 しかし、トルコとイランは中東地域の秩序に関するビジョンがそれぞれやや覇権的、自己中心的であるように見えます。大きな中東ビジョンは共有されていません。トルコとイランが協力して中東が安定化すればよいことですが、便宜的な利益共有と協力(それは外交の中で多々あることですが)にならないように注意することが必要ではないでしょうか。また第三者の利益(例えばクルド)が両国の協力によって犠牲にされることもあってはならないでしょう。だからこそ、域外大国ないし国際社会の関与も必要となります。ただし、域外大国の関与にも良い関与と悪い関与があることは言うまでもありません。

  
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