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2017年1月21日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

 戦争は、ぼくらの将来の夢を奪い、美しい記憶を消し去った。けれども、これ以上夢を見続けているわけにはいかない。戦争はそう目覚めさせた―シャフィク・アブド

何がアラブの春だ!

シリア・アレッポ(iStock)

 戦争には勝者と敗者がいる。アレッポの東側では廃墟から住民、反体制派、テロリストが退去し、西側では5年振りに盛大にクリスマスを広場で祝っている。

 日本を含め欧米のマスメディアは、東側の破壊された町と、子供たちの惨劇と、樽爆弾の非人道性を非難する。住民への残虐行為は決して看過できないであろう。

 けれども、この戦争については、少数派であろうが、私は西側の報道とはまったく違う見方をしている。戦争報道は、どこの国のメディアも自国政府の宣伝機関と化す。イラク戦争、アラブの春など、欧米諸国のマスメディアと政府はどう語ってきたか?

 海外に滞在しているとき私はCNN、BBC、RT(ロシア・トゥデイ) などの報道番組を見て、180度違う情報に接し、足して二で割るぐらいがいいところと考えている。また、普通の人々のちょっとした言葉にこそ真実が宿るものだ。

 アラブの春たけなわのとき、私はカタールに住んでいた。首都ドーハの旧市街の定宿のフロントで働く中年のエジプト人は、新聞を見せて私に言ったものだ。

 「見ろ! 気が狂っているよ。10人も警官を殺して、何がアラブの春だ!」

 アラブの春などなければ、シリアで30万人以上も人が死ぬこともなかったし、内外に1000万人を超える難民が発生することもなかった。アラブの春に乗じてサウジアラビアやカタールが、それぞれISとヌスラ戦線を支援し、欧米が支持率の高いバッシャール・アル=アサド大統領を無理やり追い出そうとしなければ、ヒズボラ、イラン、そしてロシアも深入りせずに、戦争はこれほど長く続くことはなかった。

 知人のシリア人たちからはこんな声が聞こえてくる。

 「騒乱が起こった2011年にはテロリストはサウジの支援でモスクに武器弾薬を隠していた」

 「アレッポの東側住民への支援物質の中に弾薬が隠されていた」

 「アレッポの東側では、子供たちにジハード教育をしていた」

 大人たちの思惑の中で、傷つき死んでいった子供たちこそ、最大の被害者であろう。

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