2024年4月27日(土)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年6月20日

実験装置

●他の国にまねさせたいなら、先に日本が自ら普及させてすばらしいモデルを示してかっこいいと思わせるのがいいのでは?

——日本が率先して使ってこんなにいいものがあるぞって見せないといけないかもしれませんね。

 その一例というわけではないですが、いま、京大の研究グループ(生存基盤科学研究ユニット)は滋賀で焼畑農業の研究をやっています。山を焼いて、跡地を耕して、作物を植える。焼畑は森林破壊で悪いものだと思われていますが、そんなことはない。畑を定期的に燃やして木を灰にしてミネラルとして土に返していくと、ほとんど無農薬で作物を育てることができます。エリアを決めてたとえば20年サイクルで更新すればいいんです。インドネシアとかアジアでもやっているので比較研究してます。

 手つかずの自然ではなく、人間が手を入れた自然でこそ人間が生きながらちゃんと持続することができる。日本でも焼畑をやっていた時代があったけど今ではほとんどやらなくなった。わずかに残っているところで、どのように元素が循環しているかなどを科学的に調査研究しています。でも、近代科学のほうが優れている、というのではなく、山林をサステイナブルにしてきたものは、しきたりとか、土俗信仰とか、いいつたえとか、原始的な宗教だったりします。

 本来、木を切ったり燃やしたりして山林を守ってきたやり方というのはサステナブルのはず。ただ、それですべての人間を食わせられるかというとそうではなく、数億人が限度でしょう。だから最新のテクノロジーも組み合わせていく必要が、これからはある。

●せっかくだから、お父さんの人脈で核融合マンガをつくってアピールしては?

——いいですね。マンガの話でいうと、じつは、ドラえもんは核融合で動いているといわれています。「原子ろ」を内蔵してますが、主食のどら焼きに含まれる炭化水素から水素を取り出して核融合を発生させているのではないかと。ガンダムも核融合が動力ですね。

ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドに展示されているデロリアン
※wikiaによる「Mr.Fusion」についての解説はこちら(英語)

それから映画で見逃せないのが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。初代のデロリアンはプルトニウムで動いているけど、未来から帰ってきたデロリアンは動力源に「Mr.Fusion」と書いてあるんです。fusionというのは「核融合」を表す英語。「核分裂」はfission。英語ではnuclearといったらfissionを指すのが普通で、核融合のことはfusionといいます。

 この「Mr.Fusion」はすごいんですよ。フタを開けて缶ビールとかゴミとかぽんぽん入れて、とんでいっちゃう。ゴミを入れて核融合を起こすというアイディアはすでにここで先取りされていました。わかっている人がつくったんでしょう。

 それでいうと、「エヴァンゲリオン」は機体の中に動力源がなくて、ケーブルをつないで動く。印象としてはしょぼくなったなぁと思いましたね。アトムだって動力源が体内にあったのに。

●そういえば、太陽も核融合をしているんですよね?

——はい。少し説明すると、ビッグバンでできた元素はほとんど水素でした。水素が宇宙のあちこちにあって、自分の重力で集まっていって、そうすると密度が高くなって、水素同士の核融合が起きて輝きを放ち始める。それが星です。水素の核融合で重水素ができ、重水素同士がくっついてヘリウムができると、安定してなかなか燃えない(核融合しない)。そもそも核融合はごくたまにしか起こらないんです。でも太陽はものすごく大きいからあんなに明るい。

 星の中に燃えかすがたまって、何も燃えるものがなくなっちゃうと、熱が減るので自分の重さで縮んで圧縮され、ヘリウムが2つくっついて、最後には一番安定した元素である鉄ができる。ほうっておくと鉄でとまっちゃうけど、さらに縮んで、どんどん重いものができて爆発してどーんと飛び散る。最後に爆発するときに吸熱反応でもっと重たいウランなんかががちゃがちゃっとできることになる。そうして一回死んだ星がばらまいた鉄とかウランとかがまた集まってできたのが太陽系です。だから地球にはウランとかの重い元素があるんです。


新着記事

»もっと見る