小西哲之氏の夢は「ゴミから石油を作ること」。
そのために必要な900度という高温を、核融合から得られないかというのが
小西氏の着想だ。日本人はとかく核への抵抗感が強いが、
核兵器につながらない核融合の研究は、日本が先端を走っている。
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高井ジロル(以下、●印) もし先生の研究が実用化して日本が産油国になったら、アラブの王様が困るでしょうね。
小西哲之(以下、「――」) いや。彼らはいま太陽光だけで生きていける町を作ろうとしています。石油で儲かった金を次のためにちゃんと投資している。だから、どうせなら彼らが僕の研究に投資してくれないかと思います。スポンサーになってくれれば、石油が出なくなっても生きていけますよ、と売り込みたい。
バイオマス燃料化核融合炉は、基本的に燃料がほとんどなくても動くわけです。だからどこの国でもつくれちゃうし産油国になれる。ごみはどの国でも出ますから。エネルギーをめぐる争いはなくなるでしょう。でもハイテクだから結局日本の産業界が一番強い。日本はテクノロジーをよその国に売って生きていく国。原料を輸入し、加工して製品を輸出し、廃棄物と二酸化炭素を国内で出すのではなく、こういう技術を売ってエネルギー問題を解決して感謝されて、自分も儲けるという国になっていくべきだと思います。
●核融合炉が実現してよりエネルギーができると、人間はもっと贅沢するのでは?
——どうですかね。食べ物が半額になったからといって2倍の量を食べるかといったら食べないでしょう。テレビが半額になったからといって2つのテレビを同時に見るかといったら見ないし。たくさん使えば贅沢かというと違いますからね。
食いたいというやつにものを食わせたら太ってしまう。そのおかげで人口が増えて、地球環境が危うくなってしまったのが20世紀モデル。それよりも江戸時代モデルがいい。これしかないからそれに合わせていこうとしていた時代。それで長屋で貧乏して不幸だったかというと必ずしもそんなことなくて、当時の世界では文化的にずいぶん高い生活をしていた。
実は、地球上で人類だけが種として成立していないんです。ほかの種はだいたい数が一定になっている。増えすぎて絶滅しちゃうか、一定の数で生き残るか。人類は増え続けているのにまだ絶滅していない。そろそろ一定のライン、100億人くらいで落ち着くはずで、その一定レベルでどういう生き方をするのかを考えるべき。その時あるだけのエネルギーをいくらでも使う、ということだと破綻します。
でも、一方で、需要があるからどんどんエネルギーをつくろうという考え方も依然として正しいと思うんですよ。人類はあと40億人は増えそうだし、その人たちの分のエネルギーはなんとかしないといけない。今、自由にエネルギーを使っているのはごく一部で、残りの人たちはこれから、今までの4倍も5倍もエネルギーを使うようになっていく。彼らがどんどん木を切って地球をぶっ壊す前に、テクノロジーでクリーンな使い方をしてリサイクル社会を作らないといけない。
日本は昔、身の回りにある物質やエネルギーだけを使ってそれなりに豊かに暮らしていました。そういう人たちがいま核融合でも世界トップのテクノロジーをもっているんだから、日本型の発展をいっしょにパッケージで発信したい。