世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月28日

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 シリア介入を始め中東に触手を伸ばしたロシアだが、関与が深まるにつれ、平和の確保を含め課題が山積してきたと3月25日付の英エコノミスト誌が論じています。要旨は以下の通りです。

(iStock)

 今年に入って、リビア統一政府のサラージ首相、ヨルダンのアブドラ国王、トルコのエルドアン大統領、イスラエルのネタニヤフ首相がロシアを訪問した。こうしたモスクワ詣は中東におけるロシアの存在感を示す。ロシアの関心はシリアに留まらず、安全保障、武器売却、石油をも含む。

 関係構築には、ロシアがシリアの影の実力者であることが役立っている。ロシアは対立するスンニ派とシーア派、イスラエルとアラブのいずれとも関係を保とうとしている。プーチンはシリアでイランと共闘する一方、サウジとの石油供給に関する合意を結び、エジプト大統領、トルコ大統領、イスラエル首相とも関係を構築している。

 また、昨年、カタールがロシアの国営石油会社に投資し、アラブ首長国連邦もロシア製戦闘機スホイの購入を約束した。今やロシアは、「中東でなくてはならない存在」になっている。

 西側政府が特に懸念するのはリビアで、ロシアは実力者ハフタールを支援している可能性がある。ロシアの特殊部隊がエジプト国境近くで目撃され、ロシアの軍事請負企業がハフタール支配下の領域で活動していると言われる。

 ロシアの中東介入は、米国の影響力低下によるところが大きい。しかし、ロシアの目的は限られている。ロシアには中東の覇権国になる「願望も国力もない」。ロシアの経済規模は米国の10分の1、国防費もドル換算で米国の11%だ。

 現体制の維持が混乱回避の唯一の道だ、というのが今のロシアの立場だ。安定への固執は、ロシア自身にテロの脅威があるからで、ロシアは中東を遠い場所とは思っていない。ソチからアレッポまでは、パリからベルリン間とほぼ同じ850キロだ。ロシアや旧ソ連から約9000人の戦士がISに加わったと言われる。

 しかし、安定への固執はロシアの言う西側の「体制変革の政策」を阻止したいからでもある。アラブの春が始まり、ロシアは、アラブの抗議運動、旧ソ連圏のカラー革命、2011-12年のモスクワの大規模反政府デモを全て米国の策動の一環と考えた。プーチンにとり、シリア介入の決断は、ウクライナ危機で孤立したロシアが「米国と対等の関係に戻る」と共に、「アラブの春のウィルスの蔓延」を防ぐためでもあった。

 それは空爆で達成できたが、ロシアの関与が深まるにつれ、課題も山積してきた。シリアの戦場で成功したにも係らず、「出口は見えない」。シリアの政治的将来に関する交渉は頓挫が続く。平和の確保は、多くの場合、戦争に勝つよりも難しい。

出 典:Economist ‘In the Middle East, Russia is reasserting its power’ (March 25, 2017)
http://www.economist.com/news/europe/21719425-bombs-and-diplomacy-both-part-toolkit-middle-east-russia-reasserting-its-power

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