2024年12月10日(火)

愛知県観光コンベンション局

2024年3月20日

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日本の観光需要は、週末や連休など、特定の期間に偏っている。このため、旅行者は、混雑や料金の高騰に直面している一方で、観光産業で働く側も、労働生産性を高められない状況が続いている。この問題を解決すべく、愛知県で始まったのが「休み方改革」と観光イノベーションの創出だ。指揮を執る大村秀章知事とお二人のオピニオンリーダーに、その意義と可能性を語っていただいた。
 

教育現場の改革が観光需要平準化にもつながる

愛知県知事 大村秀章 1982年農林水産省入省。1996年衆議院議員。内閣府副大臣、厚生労働副大臣等を歴任後、2011年より愛知県知事を務める。

大村 現在、愛知県が進めている「休み方改革」の中で、特に注目を集めたのは、次の2つの取り組みです。

 1つ目は、「県民の日学校ホリデー」です。11 月27日を「県民の日」、21 日から27 日までの1週間を「あいちウィーク」とし、期間中の平日1日を公立学校は休校日としました。さらに、8割を超える私立学校も休校日を設けていただきました。特に昨年は24 日が金曜で、平日にも関わらず、観光地が賑わったと聞いています。観光施設や交通機関の皆さんが割引等を行ってくださったのが大きかったですね。

 2つ目は、「ラーケーションの日」です。これは登校しなくても年に3日までは欠席扱いしないという制度です。統計によれば、土・日曜に働く人は、およそ2〜3人に1人いらっしゃいます。このようなご家庭では、家族と子どもが一緒に過ごすことが難しい。こういった課題を解決するために、保護者と共に校外で自主学習活動、例えば各地の史跡を訪ねる旅行や、自然に親しむキャンプに出掛けやすい環境を整えました。

 これらの取り組みは、結果的に、週末や特定期間に集中しがちな観光需要を平準化することにもつながります。

日本旅行業協会会長 髙橋広行 1979年日本交通公社入社。2014年JTB代表取締役社長、20年に取締役会長に就任。21年より日本旅行業協会会長としても活躍。

髙橋 観光業が抱える課題の本質をついた改革ですね。日本旅行業協会としても、全国の支部と共に取り組んでいきたいと思います。

 平日に家族で旅行がしやすくなれば、間違いなく国内旅行の総需要は拡大します。また、観光需要が平準化することによって、観光施設の稼働率が高まり、正規雇用も増え、採用の拡大にもつながるでしょう。さらにオーバーツーリズムも解消すると共に、平日の旅行であれば旅行者はより低価格でより充実したサービスが受けられるはずです。

STATION Ai株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 佐橋宏隆 2004年ソフトバンクBB入社。13年からSBイノベンチャーの事業推進部部長に就任。21年STATION Ai代表取締役社長兼CEOに就任。

佐橋 近年、多くの企業が働き方改革を進めており、ワーケーションを導入する企業も増えています。ところが、お子さんの学校があるから制度を使えていないという声がありました。愛知県の取り組みはワーケーションを普及させるきっかけになるんじゃないでしょうか。

 

観光におけるオープンイノベーションの可能性

大村 愛知県では今年10月開業予定の日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」を建設中です。これを中心にして、国内外のスタートアップやエコシステムのネットワークを融合して国際的なイノベーション創出拠点の形成を図りたいと考えています。

 このプロジェクトではスタートアップと地域産業の連携強化にも取り組むことにしています。愛知県は製造品出荷額等が40 年以上にわたり日本一というモノづくり王国ですが、実は農業産出額も全国8位であり、多様な産業が集積しています。オープンイノベーションによって、これら既存の地域産業の活性化を図り、新規事業が生まれ続けるように促しています。観光も地域産業に深い関わりがありますから、スタートアップの皆さんにどんどん観光地に入っていただき、地域産業の活性化に一役買っていただきたいですね。

髙橋 農業、水産業、製造業などを観光資源としてどう発信して、どう販売に結びつけるかは長年の課題でした。地域に埋もれていた、ある観光施設は、旅行会社とスタートアップが共同開発したデジタルの販売システムを活用したことで、世界中から半年間で2000名の集客ができるまでに成長しました。旅行者が簡単に予約・決済できるという圧倒的な利便性に加え、観光事業者にとっては人手をかけていた業務の効率化が図れ、生産性の向上に繋がっています。今後、スタートアップとの連携は不可欠といえます。

佐橋 実は、欧米では、ツーリズム産業はスタートアップの重要なフィールドです。例えば、旅行者の属性や行動データを集めることで、旅行者の分散化を図ると共に、それを地域の事業者が共有して、新しい事業展開につなげています。1事業者だけではなくて地域全体で取り組んでいることがポイントです。

大村 人流データや消費データを収集・分析し、それを次の一手につなげるような取り組みでは、ぜひSTATION Aiの皆さんにも活躍してほしいですね。

 

全5エリアが開園したジブリパークへの期待

大村 ジブリパークは3月16日に「魔女の谷」が開園し、全5エリアが開園しました。ジブリパークは旅の目的になるだけではなくて、この地域で暮らす人、働く人にとっても魅力ある資源であり、クリエイティブな人材を世界中から集める効果もあるだろうと期待しています。

髙橋 ジブリパークをフックにし、愛知県全体の観光コンテンツをデジタル化してワンストップで提供できる仕組みを造れば、より効果的ですね。

佐橋 現在活躍されている起業家って漫画やアニメを見て育っている人が多いんです。それらによって、子どもの頃から「こんな世界を作りたい」という発想を持てたのではないでしょうか。その意味でも、好奇心や夢を育んでいくフィールドとしてジブリパークに期待したいですね。

 

日本最大のスタートアップ支援拠点
STATION Ai、今年10月開業

 
 

名古屋市昭和区の鶴舞公園南側に整備中の「STATION Ai」は、スタートアップの創出・育成やオープンイノベーションを促進するために、国内外のスタートアップ支援機関・大学との連携等を通じて、様々な支援サービスを提供する予定。

 

ジブリパーク

©Studio Ghibli

愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内に作られたスタジオジブリ作品の世界観を表現した公園施設。3月16日に「魔女の谷」が開園し、5エリア全てがそろう。チケットは予約制。詳しくは公式サイトをチェック。