グループ企業の自律成長
商社流通機能と非鉄金属等の製造機能を併せ持つ「アルコニックス」は、これまで製造系13社、商社流通系5社の計18件(2024年10月時点)のM&Aを手掛け、グループ企業と共に事業を拡大し続けている。富士カーボン製造所も2019年2月にグループに加わった企業の一つ。手代木社長はM&Aの背景についてこのように語る。
「富士カーボン製造所が扱うカーボンブラシはモーターに使われる機能部品で、売上構成比の6割が自動車関連、3割が家電や電動工具関連。アルコニックスとは共通の取引先が多く、カーボンブラシに含まれる銅紛等は電子機能材事業との親和性も非常に高いことから、グループの一員に迎えた」
さらに、東南アジアに拠点を持つ富士カーボン製造所への期待は大きい。
「台湾とベトナム拠点がインド向けの事業を行っており、インドの自動車産業に対応するサテライトとして着目している。アルコニックスグループとして今後の東南アジア強化は必須のため、富士カーボン製造所の存在は非常に有効」
富士カーボン製造所も一時はコロナによる打撃を受けたが、そこからの脱却は企業の経営力と総合力が問われる、と手代木社長。
「アルコニックスグループ全体として今掲げているのは(1)グループ企業の自律成長、(2)従来通りの新規M&A、(3)リサイクルという3つの成長戦略。現在は、グループ企業が自力で躍進を遂げるという、我々が元々目指していたフェーズに入ってきている」
日常を支えるカーボンブラシ
製品に内蔵されるモーター(電動機)の中に組み込まれるカーボンブラシは、一般的に目にすることは少ないが、自動車や家電、店舗のレジ、テーマパークのアトラクションに至るまで、多種多様なシーンで欠かすことのできない機能部品である。自動車は昨今のEV化により、エンジンを起動させる際に必要なスターターモーターがなくなるためカーボンブラシも不要となるが、逆に熱マネジメントの重要性もより一層高まり、そこに使用されるファンモーターや車両の利便性向上に使用されるシート、テールゲート等の搭載機能には需要が増しているという。富士カーボン製造所の杉山社長は、カーボンブラシ業界の実状についてこう語る。
「時代のトレンドに応じて変化はあるものの、モーターがある限りカーボンブラシは必ず使われるため、急激に飛躍せずとも着実に伸びていく業界。競合は国内に5~6社あるが、新規参入が難しいニッチな分野であり、月間約3000万個、年間で4億個もの部品を富士カーボン製造所全体で生産供給している」
愛知県安城市にある本社の他、原料の技術開発や配合工程等を行う管池工場、成形から製品の検査まで工程の大部分を担い、国内拠点では最大の1万平米を誇る静岡・浜名湖工場を有する富士カーボン製造所。
「我々の強みはすべてがワンストップで対応できる総合力。お客様からいただく図面に対して、モーター特性を活かすために必要な素材配合を含めたレシピを開発し提供、それを量産した後のアフターフォローも行っている。国内のみならず海外でも同じ体制で対応できることが当社の特長」