WEDGE REPORT

2017年8月21日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 しかし、この2年ほどある変化がこの島には起きていた。中国本土からの投資話だ。取材のために訪れた時(今年の4月半ば)も、コロールの港には大型クルーザーが停泊していた。その船籍を調べると中国、上海からやって来たものだった。

 中国本土、上海や北京から自家用ジェットに乗り込んだ投資家たちが、パラオにも足を運ぶようになってきた。今年に入ってからも、自家用ジェットを駆ってパラオにやって来た中国人投資家は片手では収まらない。

 12年の中国〝スパイ〟船の記憶も生々しく、中国本土からやって来る観光客を喜びながらも、まだどこか懐疑的な視線を送っている。しかしながら、その中国人が落としていく外貨が観光立国を目指すパラオの有力な財源になっていることは間違いない。

台湾資本のリゾートホテル(右)。街を歩く中国人観光客の姿も日常的な光景になっている
(HIROSHI KODAMA)

 先の観光大臣ではないが、彼らの本音としては、日本企業の進出、日本人の観光客が戻ってきてほしいというのが本当のところだ。だが、日本側の動きは鈍い。日本の大手航空会社幹部によれば、安倍晋三首相からもパラオ便の復活(全日空、日航ともにチャーター便は夏期のみ)を要請されもしているが、実現にはまだ時間がかかりそうだ。

 3年に1度、パラオ、パプアニューギニアなど南太平洋の島々、それにニュージーランド、オーストラリアを交え「太平洋・島サミット」が行われる。排他的経済水域(EEZ)にもならないが、冒頭記したように日本にとり、安全保障からも無視できぬ存在なのである。

 パラオ滞在中、自然発火の火災が発生した。黒々とした煙がパラオの空を覆った。ゴミ捨て場となっている場所からの自然発火だったようだ。分別もされることなくただ捨てられたゴミの山。もちろん、フィリピンの悪名高きスモーキーマウンテンには遠く及ばないが、こうしたゴミ処理だけでなく、汚水を垂れ流している下水処理、電力、水道水の供給などインフラ整備はパラオの急務。日本企業が採算性から二の足を踏む中、中国資本の動きが見え隠れし始めている。

 パナマはまさにインフラ整備への巨額投資が誘い水となり〝赤い中国〟へと寝返った。パラオがそうはならないと誰が保証できるのか。誰もできはしない。

 パラオ同様に第二列島線に位置するサイパンが今は中国資本の島となり、中国資本によるカジノが中国本土からの客で賑わっていることを知っているだろうか。たしかに、軍事的な施設ができているわけではないし、戦艦が寄港しているわけでもない。しかし、まずカネを落とし、そして人を送り込み、そこを〝赤く〟塗りつぶしていくのが中国のやり方。

 パラオにも〝チャイナマネー〟により潤っているサイパンの情報は流れている。パラオ政府関係者もサイパンに何度も足を運んでいる。「パラオがサイパンのようにならないという保証はない」(パラオ政府高官)。なぜなら、潜在的にあるチャイナマネー待望の声を無視はできないからだ。

 Wedge9月号では赤く塗りつぶされたサイパンのレポートをお伝えしたい。
(文中敬称略)

  
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◆Wedge2017年8月号より

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