世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月23日

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 フィナンシャル・タイムズ紙アジア編集長のアンデルリーニが、7月19日付け同紙にて、中国政府の検閲強化により、劉暁波の死は、革命の引き金とはならないが、この計算が長期的に正しいと言えるかは疑問である、と言っています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/465Martin Muránsky/dibrova/luxizeng/Emmeci74/danielvfung)

 ノーベル平和賞をも受賞した劉暁波が死去した。政府は劉暁波の遺骨を海に散骨し、この最も著名な反体制派人士の墓が聖地となることがないようにした。

 共産党は劉暁波のようなカリスマ的殉教者の力を理解しているため、検閲を強化し、西側メディアが劉暁波のことを扱うことを強く非難している。

 中国の公式の立場は、劉暁波は中国の司法において有罪判決を受けた罪人であり、ノーベル平和賞の授与も中国に対する冒涜的な行為であり、そもそも本件は外国とは無関係である、というものだ。だが、実際には、劉暁波のような個人の自由を求め、その理想に殉じる意志を持つ非暴力の理想主義者の存在は、一党独裁にとって潜在的な脅威となるということだ。

 中国の指導者たちはみな「独裁体制は自由化するときに最も脆弱になる」ということを学んでいる。中国共産党はいかなるコストを払ってでもそれを回避しようとしている。政治改革が停滞する中で、彼らの活動が中国社会の全体としての安寧を損なわれないように劉暁波のような人物は弾圧されることになる。

 劉暁波は1989年の天安門事件の際の活躍で知られている。中国の指導者らは、人民解放軍によって天安門のデモを鎮圧していなければ、今日に至る経済発展は成し遂げられなかっただろうと考えている。政府や党の幹部は、突然民主主義を導入すれば、政治的な混乱あるいは内戦を引き起こし、人々に不幸をもたらすと信じている。

 共産党政権は、損得勘定の結果、劉暁波の考えを自由に広めさせるよりも、彼を殉教者にしてしまう方がより安全であると判断したようだ。この判断は短期的には正しいかもしれない。党の努力によって、多くの中国人は劉暁波について何も知らないし、知っていたとしてもほとんどの人は彼を単なる救いようのないトラブルメーカーだと考えている。彼の死は革命の引き金とはならない。しかし、この計算が長期的に正しいと言えるかは疑問である。トップダウンの漸進的民主化を拒むのであれば、独裁体制に対するボトムアップの拒絶反応が起こる可能性が高まる。その日が来るならば、デモ参加者は必ず劉暁波の肖像と次の言葉を掲げるだろう:「人々の自由を求める試みを止めることはできない。中国もやがて法治を実現し、人権が何よりも重視される日が来るだろう」。

出典:Jamil Anderlini,‘The logic behind China’s treatment of Liu Xiaobo’(Financial Times, July 19, 2017)
https://www.ft.com/content/bd978dc8-6c59-11e7-b9c7-15af748b60d0

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