WEDGE REPORT

2017年9月25日

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違法白タク、その最高のマナー

 素人丸出しの失敗を見せたドライバーだが、その後のフォローは完璧だった。日本語が話せない(という設定の)筆者に代わりタクシーをつかまえ、目的地まで送るよう手配してくれたのだ。ドライバーは中国東北部出身の中国人で、来日から数年たっているというが、日本語は決してうまくない。不自由な日本語で必死になってタクシー運転手に説明する姿は感動的ですらあった。目的地までかかったタクシー料金(約1万6千円)はすべてドライバー持ちだ。私が支払った費用は564元(約9580円)だ。ここから手数料を抜かれた金額がドライバーの収入となる。タクシー料金を負担すればドライバーは大赤字である。なぜここまでドライバーは親身になってくれるのだろうか。

 マナーやサービスの良さがシェアリングエコノミーの特徴だ。中国シェアリングエコノミーの雄に「滴滴出行」がある。同社はウーバー型のライドシェアを導入しているが、初期にはタクシー業界から猛烈な反発があった。ストライキや抗議集会も頻発したが、世論は滴滴出行を支持した。ガラの悪いタクシー運転手よりも滴滴出行のドライバーのほうがよっぽどマナーがよいというのだ。滴滴出行では乗車後に客が運転手を1~5点で評価する仕組みが採用されており、評価の低いドライバーは仕事を受注できる機会が減ってしまう。儲けるためにはマナーをよくするしかないのだ。精神論ではなく、利益駆動型の道徳システムがそこには存在する。先のドライバーも「私は信用を守りますから」と繰り返し話していた。トラブルがあっても自分の評価を下げたくないと必死だったのだ。

 ちなみにドライバーが乗客を評価するシステムも組み込まれており、行儀の悪い客はその後ライドシェアを捕まえにくくなる。快適に移動したければ、よい客として振舞うしかないのだ。

 皇包車も同様の利益駆動型の道徳システムを採用しており、高評価を受けるほど仕事が増えるうえに、低評価を受けた仕事では報酬が減額されるという、よりドライな仕組みだ。別の皇包車ドライバーに話を聞いたところ、「客への対応にはかなり神経を使う」と話していた。わがまま放題の金持ち子弟を乗せた時はあまりの態度の悪さにむかついたが、「必死に堪えた」という。キレたら収入が減ると思えば我慢もきくといったところか。

境外包車の利便性とコスト

 境外包車はスマホで簡単に予約でき、質の高いサービスが受けられる。しかもドライバーとは中国語でのコミュニケーションが可能で、チャーター利用の際にはガイド兼通訳の仕事もこなしてくれる。中国人にとって極めて利便性の高いサービスといえる。ある女性利用者(上海市出身、30代)に聞くと、「言葉が通じない海外なのに、不安なく行動できて便利」と評価していた。私にとって2回目の利用となったお台場観光でもサービスは上々だった。シェアリングエコノミー恐るべしとの感を抱いた。

筆者がお台場観光で乗った車
お台場観光のサービスも上々だった

 サービスは完璧だが、料金面はどうだろうか。東京都内観光の1日チャーターで2万3500円程度。皇包車の料金は5人乗りセダンだとタクシーとさほどかわらないが、7人乗り、13人乗りなどの大型車の予約ができ、13人乗りならば1人当たりの料金を3000円程度に抑えることができる。

 とりわけ中国の個人旅行客は親戚や友人など、団体で行動することが多い。また大きなトランクを持ち歩くのが一般的で大型車のニーズが高い。皇包車の予約画面でも、乗車可能な人数のほかに大型トランクを持ち込める数が表示されていた。ちなみに民泊も同様の理由で個人観光客の人気が高い。一人頭ではなく一室単位で料金を払うため、狭い部屋に雑魚寝すれば費用がぐっと抑えられるからだ。

 利便性の高い境外包車だが、問題は違法な白タク行為であることだ。日本ではライドシェアは認められておらず、タクシー業務の提供には事業用自動車の緑ナンバーの取得が義務づけられている。

 また在日中国人がドライバーとして働いた場合、資格外活動として入管難民法に抵触する恐れもある。この法的問題について皇包車を展開する北京純粹旅行有限公司に問い合わせたが、いまだ回答は得られていない。

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