WEDGE REPORT

2017年9月25日

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大手旅行サイトから違法白タクが予約できる中国

 法的には明らかに問題を抱えている境外包車だが、中国企業にとってそんなことはお構いなし。中国旅行サイト最大手の「携程旅行網(シートリップ)」や個人旅行オーダーメイドで人気の「途牛旅遊網」、同じく個人旅行に強くシートリップに買収された「去哪児網」などの旅行サイトからも予約できるほか、街中でも広告を見かけるなど、アングラなイメージは一切ない。

中国の旅行サイトではレンタカーを借りるのと同じように「白タク」を予約できる

 皇包車は今年1月に2億1000万元(約34億7000万円)のB+ラウンド融資(Bラウンド融資は、ビジネスモデルを確立し事業拡大を目指す段階での資金調達。+はそれを繰り返したことを示す)、「易途8」は昨年8月に1億5000万元のBラウンド融資を獲得し、順調に成長している。

 「唐人接」はシートリップに買収されており、境外包車は成長分野としてビジネス界でも注目を集めている。利用者数も順調に伸びているようだ。シートリップの境外包車部門は、今年7月期の境外包車利用件数が1万件を突破し、前年同月比700%と急成長したと発表している。

 こうしたサービスが評価される理由には、中国人観光客がツアー旅行を避けて、個人旅行へシフトしたことがある。中国ではツアー旅行に対する悪評が絶えない。ツアー旅行を手配する「ランドオペレーター」は各地の免税店からのキックバックを主な収入としているため、旅行といっても免税店を回るばかりでろくに観光もできないことが多いという。

 そこで中国で起きているのが個人旅行ブームだ。日本を訪れる中国人の数も2014年の240万人から2016年には637万人と約2.5倍に急増しており、昨年には初めて、中国人への個人観光ビザの発給数が団体観光ビザを上回った。

写真を拡大 (注)中国人への団体観光ビザと個人観光ビザ(マルチビザを含む)の発給件数
(出所)外務省「平成28年ビザ発給統計」を基にウェッジ作成

中国人による中国人のための中国人だけが儲かる観光ビジネス

 中国人観光客が増えることで国内での消費につながれば喜ばしいことだ。しかし今、皇包車のような「中国人による中国人のための中国人だけが儲かる観光ビジネス」が移動サービス以外でも急速に広まっている。

 その代表例は民泊だ。需要を見込んで、中国系民泊企業は日本進出を加速させている。来年1月には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、全国的に民泊が解禁されることもあり、中国人観光客の民泊活用はさらに加速するだろう。

 8月に楽天傘下の楽天ライフルステイ(東京)との提携を発表した中国系民泊企業「途家網」は、20年までに日本国内で物件20万件を確保し、年250億円の売り上げを目指すと発表している。

 中国系プラットフォームが個人旅行をも囲い込もうとする動き。これは日本だけではない。お台場観光のドライバーによると、「世界中、中国人がいる場所ならばすべてこうしたサービスはある」という。もちろん以前から在日中国人相手だけに営業している白タクは存在した。ただし、それは口コミやローカルネット掲示板というディープな世界を知らなければ使えないものだった。今やスマホアプリをダウンロードするだけで、世界中どこでも白タクに乗れてしまうわけだ。

 民泊もそうだ。無認可の宿泊所は何も昨日今日始まったわけではない。誰でも簡単に利用できるようになった点が革命的なのだ。かつてはコネやら知識が必要だったアングラな世界が、インターネットのプラットフォームに引きずり出されることによって、また、シェアリングエコノミーという大義名分によって、誰でも自由に使える存在に変わっていく。そうした静かな革命が世界で起きつつある。

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