今月の旅指南

2010年11月5日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 まるでジャムセッションを聴いているようなノリのよさである。

 静岡県無形民俗文化財に指定されている富士宮囃子〔ふじのみやばやし〕は、富士山本宮浅間〔せんげん〕大社周辺を舞台に11月3日から5日まで開催される富士宮秋まつりのお囃子だ。祭りは、氏子21町内(今年は20町内が参加)が山車や屋台を曳きまわし、収穫と1年の無事を感謝するもので、祭り最大の売り物が、この富士宮囃子の“競り合い”なのである。

秋晴れの空に、雪を被った富士山と豪華な山車・屋台が映える

 「競り合いとは、山車・屋台が、狭い通りでどちらが道を譲るか譲らないかを囃子で競うもの。相手の音に釣られて囃子のリズムが崩れたり、演奏が中断すると負けです」

 と話すのは、富士宮秋まつり青年協議会会長の伊藤洋行さん。ただし、現在は競り合いは行っているが、勝敗はつけていない。というのも、昭和初期に喧嘩が起きて、一時期、競り合いを中断。引き分けにするという条件で再開したのだとか。

 囃子の基本構成は、金銅〔きんど〕(締太鼓)2人、大胴〔おおど〕(長胴太鼓)1人、笛(篠笛)1人、鉦〔かね〕1人の5人だが、競り合いで演奏するのは6~7人。9月中旬頃から1カ月半ほど練習した成果をみて、各区の囃子長が演奏者を決めるという。

 「富士宮では、子どもの頃からみんな囃子の練習をします。ですから、そこに選ばれることは大変な名誉。競り合いできっちり自分の仕事をこなすことは“使命”なんですよ」

 曲目は、山車・屋台の曳きまわしの際に囃されるのが「にくずし」。競り合いには、“喧嘩囃子”とも呼ばれるテンポのよい「屋台」を演奏し、周りの興奮を煽る。篠笛の軽快な音色、金胴が刻むリズム、大胴が生みだすアドリブ……。日本の伝統芸能に、フォービートのこれほどノリのよい音楽があったとは、まさに目からウロコだ。

 「競り合いは、祭りの3日間でおよそ100回行われます。今年はそれを一覧表にした『秋まつり瓦版』を作りましたので、ご利用ください。もちろん、囃子だけでなく人形の載った江戸型山車や華麗な屋台も必見。視覚でも聴覚でも楽しめる富士宮秋まつりをご堪能ください」

 
 
 
 

富士宮秋まつり
〈開催日〉2010年11月3~5日
〈会場〉静岡県富士宮市・富士山本宮浅間大社周辺、中心市街地(身延線富士宮駅下車)
〈問〉富士宮市商工観光課 0544(22)1155
  http://www.city.fujinomiya.shizuoka.jp/
  http://akimiya.com/

◆ 「ひととき」2010年11月号より

 

 

 

 

 
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