今月の旅指南

2010年12月3日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

「色絵波兎文変形小皿」
佐賀県立九州陶磁文化館
柴田夫妻コレクション

 来年の干支〔えと〕、兎にちなんだ意匠の陶磁器を集めた展覧会が、佐賀県立九州陶磁文化館で開催される。

 会場に並ぶのは、兎の形状をしたユニークな皿や手焙〔てあぶ〕り、兎の絵が描かれた盃や瓶などおよそ80点。なかでも数多くみられるのが、「月と兎」「波と兎」をモチーフにしたものだ。

 写真の「色絵波兎文変形小皿〔いろえなみうさぎもんへんけいこざら〕」は、波間に兎が跳ねている意匠で、まわりにあるのは雲。兎を月に見立てているようにも見える。

 兎が月と一緒に描かれるのは、中国の伝説によるもので、月には不老不死の霊薬を作る兎と蛙が棲んでいると考えられているとか。「月兎」の意匠は、日本でも桃山時代から江戸時代にかけて、焼物や狂言の衣裳などの文様に盛んに用いられた。

 また「波兎」のモチーフは、日本の神話「因幡〔いなば〕の白兎」が題材にされているとか、謡曲「竹生島〔ちくぶしま〕」の中で、琵琶湖に映る月を波間に跳ねる兎にたとえて謡われたことから生まれたともいわれている。

 荒波を飛び越えていく兎の姿や、すばしこい逃げ足は武家社会に好まれて、江戸期に大流行し、さまざまな工芸品の図柄に用いられた。

 “飛躍”の象徴ともされる兎は、おめでたい十二支のひとつ。美しい意匠の器を観賞しながら、兎にまつわるさまざまな物語を楽しまれてはいかがだろう。

 
 
 
 

新春展 干支兎の文様
〈開催日〉2010年12月17日~1月16日、ただし月曜と年末(12月29~31日)は休館
〈会場〉佐賀県有田町・佐賀県立九州陶磁文化館(佐世保線有田駅下車)
〈問〉0955(43)3681
  http://www.pref.saga.lg.jp/web/at-contents/kanko_bunka/k_shisetsu/kyuto.html

◆ 「ひととき」2010年12月号より

 

 

 

 

  
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