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2018年3月9日

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林 智裕 (はやし・ともひろ)

ライター

1979年生まれ。いわき市出身福島市育ち。 シノドス主宰『福島関連デマを撲滅する!』プロジェクト立ち上げメンバー。 『福島第一原発廃炉図鑑(開沼博・編(太田出版)』にてデマ検証コラム執筆。SYNODOS (シノドス) 不定期共同連載中。他、福島TRIP、ダイヤモンドオンライン、第三文明などへも記事を執筆。広がってしまった福島に対してのフェイクニュースや誤解を減らしていくための活動の一環として、「Factcheck福島」を運営。

 こうした福島への誤解と偏見を減らしていくためには3つのアプローチが必要ではないでしょうか。

 1つ目は、「ポジティブなニュースや楽しいことを積極的に発信していくこと」

 2つ目は、「ネガティブなデマや誤解を検証し、訂正していく」こと

 3つ目は「正しい知識を持つ人を増やしていく」こと

 これらのアプローチにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、バランス良く組み合わせて問題解決にあたる必要があります。

 特に、2つ目に挙げた「デマや誤解を検証し、訂正していく」ことには、間違いが間違いであると、きちんと明らかにすることによって不必要な社会不安を減らし、混乱を収めるメリットがあります。

 しかし、これには以下のようなデメリットも同時に存在します。

 ・人の自然な感情や思惑以上に客観的な事実を重視するために、「冷たい」との印象を持たれてしまう

 ・デマをまくコストに比べ検証するためのコストはケタ違いに高くなる

 ・検証する対象であるデマやヘイトスピーチが、そもそも被災地やその支援をする人々にとって不愉快なものであるため、それを可視化させること自体にも苦痛や批判が伴う

 ・たとえ正当な反論であっても外からみれば、内輪もめに見えることで「楽しくない」「怖い」「面倒臭い」「どっちもどっち」とされ、一般の方が福島に関わるためのハードルが上がってしまう

 ・それらの結果、商売としての風評被害対策にとってはむしろ障害となる面もある

 などです。

 こうしたデメリットからか、デマを否定・訂正していくことには、行政も報道も積極的とは言えませんでした。それは言い換えれば、政治も主要メディアもこの7年間、福島への差別的なデマやヘイトスピーチの暴力から被害者をほとんど護ってくれなかったということを意味します。それらが野放しにされ続けた結果、今でも一部報道やドキュメンタリー番組、講演会などには福島への誤解を誘発させるセンセーショナルな言葉や表現が見られており、行政がむしろ後援などでそれらへと協力しているケースすらも見られます。

 こうした事態を受けて、2017年12月12日に復興庁が「原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース」で示した『風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略』の序文には「科学的根拠に基づかない風評や偏見・差別は、福島県の現状についての認識が不足してきていることに加え、放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果等が十分に周知されていないことに主たる原因があると考えられる。このことを国は真摯に反省し、関係府省庁が連携して統一的に周知する必要がある」と記載されました。

 震災後次第に福島に関しての検査結果や知見が出そろい、当初の予想よりも被害がはるかに少なかったことが判ってくるにつれて、『東電原発事故での放射線リスクに対しての「理科」の果たすべき役割はほぼ終わった。これからは「社会科」の出番だ。』『そのためには一人ひとりに向き合う丁寧なコミュニケーションが必要不可欠になる』というような言葉が、もう何年も前から言われ続けています。

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