使えない上司・使えない部下

2018年5月15日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

家族を愛することができない人が、
お客様を愛することなんてできません

舟木なみさん

 社長になった初期の頃は、美容師さんたちは「また、美容師じゃない人が経営するんだな」ぐらいに思っていたんじゃないでしょうか。父も美容師ではないし、私もそうではない。美容師さんは、職人の世界ですね。私にはその意味で教える技術はないし、知識もない。リスペクトされるものを持ち合わせていないから、求心力がないんですよ。

 私は、「家族」という言葉を意識して使うようにしたんです。店長さんたちを前に「私たち、家族だよね」と繰り返しました。当初、ちょっと引いていたようですね…。それでも、言い続けたんです。半年後ぐらいから、店長さんたちがそれぞれのお店の美容師さんたちに「ファミリーなんだから…」と話し始めたんです。

 その姿を見ていて、思いました。かわいい! って。私の中に母性本能が芽生え、美容師さんたちを「ウチの子」と思うようになったんです。年上の美容師の方にも「ウチの子…」って…(笑)。私がお店に行くと、美容師さんたちと握手。ハグをするときもある。ボディランゲージは、大切です。「ファミリー」と口で言っているだけじゃ、ダメ!行動がともなってこそ、意味を持ちます。

社員の皆さん

 「家族」と言い続けていくと、私の意識も変わっていくんです。どうしたらもっと働きやすくなるか、と考えるようになりました。その1つが、各店舗の裏の休憩室に炊飯器を置いたことです。美容師さんはお客様のご都合に合わせますから、食べる時間帯が不規則になりがち。ついつい、後回しになることもあるのです。ここでも私の母性本能が働き、なんとかしなきゃ、と思うようになります。お米も支給するようにしました。もちろん、無料ですよ。何杯でも食べてください。あと、ふりかけも…。今では、お客様がおかずなどを差し入れしてくださるんですよ。この場を借りて、お礼申し上げます。

 美容学校を卒業した人を新卒として採用しているですが、はじめに研修を受けてもらっています。人の特性を9つのタイプに分類するエニアグラム診断もします。それぞれの社員のことを把握したうえで、接するようにしているのです。たとえば、「論理的な思考力が深い」という診断結果が出た子がいるとします。その子の書いた報告書を読むときには、それを感じさせるところにほめるようなことを私が書き加えます。「論理的な思考力が深い」という長所をより伸ばしていくようにしているんです。「ウチの子」と思えば、いろいろなことが見えてきます。

 「あいつは使えない」という言葉? そんな言葉を使う社員がいたら、激怒します。許さない! 会社を経営し始めたのが2006年ですが、幸いなことに現在までに聞いたことがありません。「使えない」には、人を見下したニュアンスがありますね。人をモノ扱いにして、人間の尊厳を否定しています。

 ウチの子たちには、人間力を兼ね備えてほしいんです。人から愛され、人を愛することができるような力を持っていてほしい。採用試験で面接のとき、家族などを愛することができる人を優先して採用しているんです。家族を愛することができない人が、お客様を愛することなんてできません。私は、ウチの子たちを愛しているし、これからも愛し続けます。

 父? 今は80代ですが、元気みたいですよ。この会社の経営には何も言いません。一言も…。私も相談しませんから。父の会社を整理した後の数年間は、親子で口をきくことすらなかったんです。聞く限りでは、年金から数万円ずつをかつての債権者などに返済し続けていたようです。そのあたりが、創業経営者なのかな。私は損得で動くけど、父は義理とか、恩で…。  

 時々、ネットで私のことを検索しているみたいだから、この記事を読むかもしれない。喜びそうなことを話しておかない、とね…(笑)。

  
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