WEDGE REPORT

2018年5月30日

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 元々、アルカティリ政権は少数与党である。はなから議会運営が行き詰まることは目に見えていた。それでも、連立を組む相手がいなかったから止む無くそのまま出発した。しかし、既に、アルカティリ首相とグスマン氏との関係は冷え込んでいる。グスマン氏の協力を得られないまま船出した少数政権に政権維持能力はなかった。議会が政府提出の法案二本をブロックし、予算の成立も見込めない状況を前に、事態の打開は議会の解散と総選挙の実施しかなかった。

 結局、アルカティリ政権は1年ももたなかったのである。そして総選挙の結果、アルカティリ氏のフレテリンはグスマン氏のCNRTに敗北、CNRTが率いるAMP連合は過半数の議席を制し、ここに政権の交代とグスマン氏の首相返り咲きが確定した。 

再びすべてがグスマンの双肩に

 尤も、新政権発足までにはまだ時間がかかる。グスマン氏は混乱の後の非常事態として自ら政権運営に乗り出すか、あるいは、やはり世代交代を進めるべきだとして若手に政権を委ねるか、そのあたりは当面はっきりしない。一つはっきりしているのは、若手といってもアラウージョ氏以外、めぼしいところが見当たらないということだ。かといって、フレテリンとこういう関係になってはアラウージョ氏の再登場はもうないだろう。そのあたり、グスマン氏はどう判断していくか、国内の安定は一人グスマン氏の肩にかかっているのである。

 そしてもう一つの気がかりが、今後、グスマン氏とアルカティリ氏の関係がどうなっていくかだ。何せ、この二人の関係が東ティモールの安定を決める。冷え込んだ両者の関係が一挙に好転することはないだろうが、だからと言って、このまま冷え込んだままにはならないだろう。老獪なグスマン氏にとり、アルカティリ氏との関係が安定することが東ティモールの発展に不可欠だということは嫌というほど分かっている。将来を考えれば、このままアルカティリ氏との関係を冷え込んだままにするとの選択はない。

 グスマン氏主導の新たな政権が早急に取り組まなければならない課題は目白押しである。何と言っても、昨年来、国政が一歩も前に進まなかった。2017年のGDPは、とうとうマイナス1.8%を記録した。独立以来長い間10%近い成長を誇っていた国が、である。この国のGDPは、ほぼ政府支出により決まる。民間の経済活動はなきに等しいのだ。その政府による公共投資が大きく落ち込んだ。その結果がGDPの落ち込みにもろに出た、というわけである。

 他方、この国の収入は石油・天然ガス一極依存である。ティモール海に眠る石油。天然ガスの採掘でこれまで潤沢な国庫収入を得ていた。それが独立以降の目覚ましい安定と発展につながったのだが、その石油、天然ガスもこのままではあと10年も経たないうちに枯渇すると言われていた。そうなれば国庫収入は途絶、財政が破綻する。

 ところが2018年2月、新たな油田、グレーター・サンライズに関しオーストラリアとの間でとうとう合意に達した。この油田を巡っては、これまで両国間で長い間対立が続いてきた。それがここにきてとうとう合意に至ったのである。まだ、精製をどこで行うか、合意を見ない点は残るものの、推定埋蔵量3兆円乃至4.5兆円といわれるこの油田開発が合意されたことは大きい。これで東ティモールはしばらくの間、食いつないでいけるのである。この交渉妥結の立役者がグスマン氏だった。

 グスマン氏は、自らオーストラリアとの間で妥結した新油田開発の収益をもとに、改めて東ティモールの舵取りに乗り出していくことになる。表舞台に出るか、あるいは舞台裏に引き下がるか、いずれにせよ、東ティモールのこれからは再びグスマン氏の双肩にかかることになった。

  
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