ネット炎上のかけらを拾いに

2018年9月25日

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動画がなかったら、矮小化されていたに違いない

 このニュースへの反応として、「動画を撮影する暇があるなら、さっさと逃げて通報すればいいのに」「動画を撮影する余裕があるならそんなに怖くなかったんじゃないか」といった反応が少しあるが、筆者はそうは思わない。

 動画がなかった場合、果たしてどれぐらいの人が「コンビニのオーナーがズボンの中に手を入れてチャックから指を出して見せつけてくる」という事態を信じただろうか。「見間違いなんじゃないの?」と言われたかも知れない。信じたとしても、ああまで堂々とやる姿を想像できる人のほうが少ないのではないか。カウンターの下から、チラチラっとでしょ?ぐらいと受け取ってしまいそうだ。

 性器の隠語にしても、被害者が「卑猥なことを何度も言っていた」と説明するよりも、動画のほうが何倍も雄弁だろう。

 このコンビニは栃木県内のセブン-イレブンだった。今回の件が大きく広まったことを受け、セブンはオーナー本人からフランチャイズ解約の申し出を受けて21日付けで契約を終了したと報道されている。動画がなければ、これほどのスピードでの処分はなかっただろう。

 その後の報道やツイッター上の情報では、このコンビニは以前から「変態セブン」と言われ、女性客や女性店員に対するオーナーの言動が問題視されていたようだ。オーナーから胸や尻をわざと触られたことがあるという、元アルバイトの女性のツイートも見られた。こういった情報のとおり、本当にこれまでもセクハラが繰り返されてきたのであれば、それが見過ごされてきたのは確たる証拠がないことが大きな理由のひとつだったのではないか。

 繰り返しになるが、あなたは入ったコンビニでオーナーの男性がチャックから指を見せつけてくることを想像できるだろうか。昭和のバラエティ番組に登場した「変なおじさん」を連想する人はいるかもしれない。しかし実際の「変なおじさん」は、笑いではなく恐怖を感じる存在なのだ。

 動画の中で、女性たちは叫び声をあげている。笑い声も混じるが、その笑いは、戸惑いをなんとか打ち消そうとしている「笑い」に聞こえる。彼女たちが戸惑いながらも動画を撮影してくれて良かったと思うのである。「変なおじさん」は多くの場合、男性たちの前ではその片鱗を見せないのだから。
 

  
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