名門校、未来への学び

2018年12月6日

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鈴木隆祐 (すずき・りゅうすけ)

ジャーナリスト

1966年長野県生まれ。法政大学文学部在学中より出版社で雑誌編集を始め、その後フリーに。著書に『名門高校人脈』(光文社新書)、『名門高校 青春グルメ』(辰巳出版)ほか。

12月5日に新作『Ⅻ』が発売になる

 「最初はよくわかんなかった。どうなっているのか気になって、何回も聴いて、やがて人の家で練習し出したんです。わが家ではもうピアノは封印されてたから。それが当時からパンクバンドをやってた高橋学、通称マービンって同級生の家で、数少ない友達の一人でした。

 マービンはその時、映画監督になりたいって言ってたんだけど、本当はジャズをやりたかったみたい、アルトサックスを。私への手前遠慮してたって(笑)。彼の家が開放的で、調布に建築家をしてるお兄さんと二人で住んでたんですね。夜な夜な、デザイナーだとかの仲間が集まって遊んでた。で、国高でも個性的な連中の溜まり場だった(笑)。

 そこにアップライトピアノが置いてあって、行っては弾いてたんです。そしたら、みんなわらわら集まって来て、けっこう受けた。そっち界隈の人にも、『アメリカ行ったほうがいい』と背中は押してもらえましたね。

顧問の先生には怒られたけど

 高校ではいちおう部活もやってましたよ。バスケ部にも所属し、仲よくなった子とは今もつき合いがあります。まめに練習には出ず、部室でダラダラって感じでしたけど(笑)。そこで化粧して着替えて、新宿のディスコに行こうぜって。弥生ちゃんって渾名の、名物の顧問の先生に見つかって、首根っこつかまえられたりね(笑)。

 高校がバイト禁止じゃないのは助かりましたね。おかげで渡航費用が溜まった。バイトはデニーズが長かったですね。奨学金が出るんで、必要なのは生活費だけ。さすがにそれは親が出してくれました」

 高校を出てすぐに渡米するなど、とても勇気の要ること。それだけ大西さんはジャズに魂を奪われたのだ。モンク固有の不可思議なコード進行について語る大西さんからは、その初期衝動が今なおひしひしと伝わってくる。文化祭演劇の準備に勤しむ、生徒と交わした会話が脳裏に甦ってもきた。彼らも同様に、自身の芝居の眼目について熱を込めて語っていた。

 12月5日に発売となった新作『Ⅻ』は、従来のトリオ(ピアノ・ベース・ドラム)に3管を加えたセクステットを結成、厳選された12曲の全曲が書き下ろしという、気合いの入ったアルバム。中に『Teenager』というタイトルの曲もあって、大西さんの自作だ。

 「自分の10代を振り返ってというんじゃなく、今1歳になるワンコが人間にしたら15歳なんで、愛犬に捧げた曲です(笑)。でも、当時聴いていた曲のエッセンスは入っているかな。スティーリー・ダンとかスティービー・ワンダーなんか…」

 それはポップでメロウだが、モンク的な浮揚感も漂うミステリアスな曲だ。弾みつつも沈む、青春のもどかしさを感じる。そして、あの頃の音楽の魅力が詰まっている。ジャズというとかしこまってしまう読者にも、ぜひ聴いてもらいたい。

校舎写真=安藤青太(大西氏写真は本人提供)

【大西順子プロフィール】
ジャズピアニスト。1967年京都生まれ。東京に育つ。都立国立高校を経て、89年ボストン、バークリー音楽大学を卒業、ニューヨークを中心にプロとしての活動を開始。
93年デビュー・アルバム『ワウ WOW』を発表。大ベストセラーとなり、同年のスイングジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞日本ジャズ賞を受賞。
95年のスイングジャーナル誌読者投票では、<ジャズマン・オブ・ジ・イヤー>をはじめ、<アルバム・オブ・ジ・イヤー><コンボ><ピアノ>の 4 部門を受賞。人気実力ともに日本ジャズ・シーンのトップに昇りつめる。
2012年夏、突然の引退宣言をしたが、2013 年9月、クラシックの祭典「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」へ出演。小澤征爾氏の猛烈な誘いに負け、一夜限りの復活とし出演を決める。
小澤征爾率いるサイトウ・ キネン・オーケストラと大西順子トリオの共演は、この夏の大きな話題となり、素晴らしい反響を呼ぶ。
15年9月、東京JAZZ へ出演。日野皓正&ラリー・カールトン SUPER BAND のサポー ト・メンバーとして出演し、その圧倒的な存在感でシーンに復帰を飾る。
18年12月5日、新作「XII (twelve)」をリリース。

  
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◆Wedge2018年12月号より

 

 

 

 

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