定年バックパッカー海外放浪記

2018年12月30日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

消防団活動は地域住民の高い自治意識で成り立っている

 お年寄りによると、地元消防団員は普通の仕事を持っている市民なので新年休暇を返上して大晦日の夜から緊急呼集に応じて出動しているとのこと。さらに問題は出火原因が他所から遊びに来た若者の花火の不始末であり地元住民は非常に怒っているとのことであった。

岬の山火事は夜が明けても鎮火せず

 自分たちの町は自分たちで守るという植民地時代から培われた自治意識が健在なのだ。都市部に住んでいる日本人にはこうした自治意識が薄いのではないかと彼我の違いを感じた。

 夜が明けきるとヘリコプターも出動して森に水を投下(water bombing)し始めた。結局鎮火したのは午後3時頃であった。

得意料理が並ぶ海岸の新年会

近隣住民の新年会

 10時頃遅い朝食を準備しようと公園のBBQハウスの電気ホットプレートのスイッチを入れて熱くなるのを待っていたら、近所のおばさんがやってきた。アイルランド系のエレムさんは、毎年自宅に近隣の人達を呼んで新年会を開いてきた。ところが今年はキッチンの改修工事中なのでビーチのBBQハウスで新年会をすることにしたという。

 エレムさんは持参したパンプキンケーキとキャラメルオニオンとミニトマトが載ったクラッカーをテーブルに置いた。各自得意料理を持ち寄る趣向とのこと。シンガポール出身の中国系女性アミ―がミント味のミニチョコレートケーキを勧めてくれた。アミ―は30代半ばであろうか、離婚してお一人様生活を満喫していると快活に語った。

 そのうち三々五々と集まってきて10人くらいのパーティーとなった。BBQハウスのピクニックテーブルの上は持ち寄った料理で一杯になった。シャンパンやワインも配られて盛り上がってきた。

市民から聞くオーストラリアの多様文化主義とは

 オジサンが自転車旅行をしていると聞いてダンという50代前半の白人系男性が話しかけてきた。ダンは夫人のアンジェラとセントへレンズで二人暮らし。以前はメルボルンでサイクルショップを経営していた。

 オーストラリアには中国・インドなどからの非白人系移民が近年急増している。しかしセントへレンズのような地方の田舎町で非白人系住民を見かけることは稀である。そんな感想を述べるとダンは「非白人系移民の大多数は仕事の得やすい大都市圏に定住するのがフツウだね。オーストラリアは多文化主義国家であり、我々田舎の人間もどんな国の人々でも大歓迎だよ」との模範的コメント。

 さらにオジサンがオーストラリアでアフリカ系、中東系の住民をほとんど見かけないことについて質問したところ「難民としてアフリカ系、中東系も人道的観点から国際的要請に従い限定的に受け入れている。当然のことながら偽装難民を防ぐべく厳重な審査をしているが、それでも彼らの受け入れは最小限にするべきだと思う」とダンは断言した。

 「英語でのコミュニケーションができず、教育水準も低く何の技能も持っていない人々はオーストラリア社会の負担になってしまう。そしてオーストラリア社会に順応できない異質な集団が増えれば、将来欧州のように反社会的な若者が増えて社会不安をもたらすことが心配だ。狂信的イスラム教徒はオーストラリアの社会秩序への脅威になるだろう」と慎重に言葉を選びながら苦い顔をした。欧州の現実を他山の石としてオーストラリア市民は移民政策のあるべき姿を模索しているのだろう。

 現在でもオーストラリア政府が移民を審査する際の大前提は“英語コミュニケーション能力”“民主主義・道徳規範などオーストラリア市民としての価値観の共有”であることを思い出した。

⇒次回に続く

  
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