WEDGE REPORT

2019年1月7日

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 当日はフジテレビの中継でメインキャスター兼解説者の高田延彦統括本部長が敗戦直後「体重差を考えたら、やってはいけない試合」とコメント。試合直前には「始まるよ! RIZINって凄いね!」などとはしゃいでいたにもかかわらず、同じコメンテーターとは思えないような掌返しの言葉を発して物議を醸していた。この〝二重人格発言〟は主催者サイドの立場としても失格である。本当に「やってはいけない試合」ならば、最初からやるなと言いたい。

 RIZINの榊原信行実行委員長は報道陣に対し「僕はやってよかったと思う」と言い切った。だが、本当にそう思っているのだろうか。炎上商法としては確かに成功だったかもしれない。しかしながら何よりも那須川がメイウェザーに完敗したことで受けたイメージダウンは想像以上だ。

 格闘技の事情に精通している一部のコアなファンは那須川の敗戦を冷静に受け止められるかもしれないが、まず一般の人たちはそう見ない。たとえ体重差があろうが、門外漢のボクシングルールであろうが「那須川はメイウェザーに子ども扱いされてコテンパンにやられた選手」という先入観が植えつけられてしまったからだ。那須川の試合はもう見ない――。そう思う一般層の人たちは激増しているはずだ。

今後のビジョンも大幅な見直しが求められる

 これから先に那須川がRIZINでどのような相手と戦って勝ったとしても〝メイウェザーショック〟を払拭することは容易でない。格闘技ファンの間で対戦が熱望されているK1のカリスマ・武尊との夢対決も何だか色あせてしまう。こうなると格闘技に興味のない一般層をもファンとして取り込みたいRIZIN、そして中継局のフジテレビとしては非常に痛い。イチ押しの那須川に悪いレッテルが貼られてしまったとあっては、今後のビジョンも大幅な見直しが求められることになるだろう。

 それにしても若干20歳の那須川を担ぎ出し、このような分かり切った結末を招いてしまった主催者側の罪は決して軽くない。16歳当時の那須川がメイウェザーの試合を見ながら「いけるんじゃないかな」と口走る映像を〝煽りV〟で得意げに流していたフジテレビの神経も疑う。こんな将来のあるキックボクサーをソノ気にさせ、自殺行為の戦いに臨ませたのは大人たちのやるべきことじゃない。那須川陣営だって普段世話になっている主催者側から「メイウェザーとやれ」と言われれば、簡単に「NO」とは口に出来ないだろう。

 とにかく昨年大晦日のRIZINはゴタゴタばかりだった。サマンサ・ジャン=フランソワと対戦予定だったシュートボクシング女子の人気選手・RENAが減量失敗で欠場。RENAは〝ツヨカワ格闘家〟として写真集発売などリング外でもタレント活動に忙殺されていた中での失態となり、周囲から現在も批判が集中している。だが、主催者側からは今のところRENAにペナルティを課す方針は示されていない。この姿勢はプロ格闘技の主催者としていかがなものなのだろうか。

 ギャビ・ガルシア(ブラジル)がバーバラ・ネポムセーノ(ブラジル)に一本勝ちした直後には、過去にギャビとの対戦が流れたプロレスラー・神取忍が乱入。「ふざけんな、やれんのか」とギャビにマイクアピールした神取について、榊原実行委員長が厳重注意するどころか「プロ魂を見た」と賞賛したことにも個人的に首をかしげている。

 「RIZINを競技化しようという気には1ミリもなっていません」とは同実行委員長がメイウェザー対那須川戦の試合後会見で発した言葉だ。なるほど、そう考えるとRIZINは〝格闘技バラエティ〟として生き残っていく道を模索しているのかもしれない。

  
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