ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」

2019年4月3日

»著者プロフィール
著者
閉じる

佐藤達夫 (さとう・たつお)

食生活ジャーナリスト

1947年5月30日、千葉県千葉市生まれ。1971年北海道大学水産学部卒業。1980年から女子栄養大学出版部へ勤務。月刊『栄養と料理』の編集に携わり、1995年より同誌編集長を務める。1999年に独立し、食生活ジャーナリストとして、さまざまなメディアを通じて、あるいは各地の講演で「健康のためにはどのような食生活を送ればいいか」という情報を発信している。日本ペンクラブ会員、女子栄養大学非常勤講師(食文化情報論)、食生活ジャーナリストの会事務局長。主な著書共著書に『食べモノの道理』(じゃこめてい出版)、『栄養と健康のウソホント』(一般社団法人家の光協会)、『これが糖血病だ!』(女子栄養大学出版部)、『安全な食品の選び方・食べ方事典』(成美堂出版)、『野菜の学校』(岩波書店)、『新しい食品表示の見方がよくわかる本』(中経出版)ほか多数。講演活動では、「あなたはなぜやせられないか?」「生活習慣病は自分で治す」など肥満や糖尿病のメカニズムや、「健康長寿のための食事と生活」という食生活と健康にまつわる最新情報を、医師の視線ではなく、一般の人にわかりやすいことばで提供する。あるいは、健康を保つ上で欠かせない技術としての「安全な食品の選び方」や「食品表示の見方」あるいは「健康にいい野菜の栄養情報」を、やさしく解説する。また、長年、女性雑誌を編集してきた立場から、「男性の家事が社会を変える」「中高年からの二人暮らし」などのテーマで、男性の家庭内自立を説く。

(krisanapong detraphiphat/iStock/Getty Images Plus)

ない便は出せない!

便秘に悩む人は日本人全体の3~5パーセント【※1】。男性よりも女性のほうが圧倒的に多く、高齢になるとその悩みは顕著になる。もっとも、この比率は「有訴者率」といって、有病者の割合ではなく「自分は便秘だと思う」という人の割合である。

そうはいっても、ビジネスパーソンの中にも便秘で悩んでいる人があるだろうから、今回はその解消に役立つ情報を提供する。便秘で悩んではない人にとっても、健康増進には役立つので、覚えておいてもらいたい。

便秘というのは微妙な症状で、きちんとした定義がない。便の状態(固いとか柔らかいとか)、便の量(多いとか少ないとか)、頻度(週に2度とか3度とか)などが、専門家の間でも定まってはない。客観的な定義は別にして「満足のゆく排便がない」と感ずる人が多いのだろう。

ただし、軽く考えてはならない。便秘には消化管の重大な疾病が隠れている場合もあるし、便秘が長く続くことによって、やっかいな疾病を招くこともある。頑固な便秘が長期間続く場合や、便秘と下痢を繰り返す場合などは、早めに受診することを勧める。

一般的に、便秘というのは大腸や直腸の中に便があるにもかかわらず排泄できない状態をいう。しかし、便秘だと主張する人の中には、腸の中に便がないので(当然のことながら)排便がない人もいる。これは便秘ではない。この人が(対応を間違って)下剤などを服用すると、排便が実現しないだけではなくきわめて不快な症状に襲われることになる。ここでは「便の量を増やす」対策を考えてみる。

基本的には、まず食べること。「ない袖は振れぬ」にたとえていうならば「ない便は出せぬ」となろうか。

便の主成分(?)は食物繊維

便の元(内容)は大きく3つある。1:口から入った物(食物繊維等)、2:腸内に住んでいる物(腸内細菌等)、3:体の構成物質(腸の粘膜や細胞など)の3つ。このうち2と3を増やすことは、そう簡単にはできないので、まずは1を増やす方法を考えよう。

食物繊維とは「口から入っても、体内に吸収されずに、肛門から出てくる物」である。いま「体内」といったが、胃の中や腸の中は、厳密にいうと「体内」ではなく「体外」だ。腸の粘膜に開いている小さな穴を通って中に入ると、そこが「体内」。私たちの体には、口から肛門まで「体外」というトンネルが通っていると考えてよい。

口から食べられて、消化・吸収作用を受け、体内に入って栄養的な働きをする物質を「栄養素」という。食物繊維は「体内」に入らないのだから栄養素ではない、と長い間考えられてきた(いまもそう考える栄養学者はいる)。しかし、体内には入らずとも、胃や腸の中で「栄養的な働きをする」ので栄養素として考えるべきだという説が、いまは有力である。

食物繊維の栄養的な働きというのは、余分な脂肪分や糖分や塩分を体外に(便といっしょに)排泄したり、便の量を増やして腸壁に付いている発がん物質などを(便といっしょに)肛門から排泄したり、腸内細菌のエサとなって腸内環境を改善したりする働きである。いずれも、糖尿病や高血圧症や脂質異常症やがんなどの予防に役立つとされている。
 

【※1】平成28年国民生活基礎調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h28_rev2.pdf

関連記事

新着記事

»もっと見る