海野素央の Love Trumps Hate

2019年4月3日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

オルーク候補(撮影@テキサス州エルパソ)

 今回のテーマは、「オルーク集会に参加した支持者の声」です。民主党のホープべト・オルーク元下院議員が3月30日、地元の米南部テキサス州エルパソで大統領選挙出馬宣言を行いました。現地に入り、支持者を対象にヒアリング調査を実施したので、本稿では彼らの声を紹介しましょう。

夜明け前の会話

 ドナルド・トランプ米大統領はメキシコとの「国境の壁」建設を正当化するために2月5日に行われた一般教書演説の中で、「エルパソは最も危険な都市の1つであったが、国境の壁が建設されたので、最も安全な都市の1つになった」と主張しました。

看板を掲げる熱狂的なオルーク候補の支持者(海野撮影@テキサス州エルパソ)

 筆者は、オルーク氏の大統領選挙出馬宣言の集会が開催される日の前日3月29日夜10時半にエルパソに入り、翌日午前3時15分に起床し、片手に地図を持って、1人でホテルから真っ暗な道を徒歩で会場に向かいました。その間、安全面で少々不安がありましたが、危険な場面に直面することはありませでした。

 確かに、トランプ大統領が指摘するようにエルパソは安全な都市の1つになったのかもしれません。

 ところが、オルーク候補やエルパソのディー・マーゴ市長は、トランプ大統領のうえの発言に猛反発しています。というのは、エルパソに国境の壁が造られた2008年と09年の前から犯罪率は低下しているからです。それでも14年は年間で約3000件の犯罪がエルパソで発生しています。

 集会が開始される6時間15分前の午前4時15分に会場に到着すると、オルーク陣営のスタッフ、政治コンサルタント及びイベント業者が会場設営に追われていました。周りには筆者以外の参加者はいませんでした。

 トランプ大統領は米中西部ミシガン州グランドラピッズで3月28日に支持者を集めた集会を開いています。このときは、集会開始の11時間半前に会場に着きましたが、すでに徹夜組を含めて70~80人の支持者が列を作っていました。それと比べると、オルーク候補の集会は熱狂的ですが、支持者の熱意はまだトランプ大統領の集会の域には達していません。

 さて、2番目に会場に到着したのはエルパソ出身の銀行員リチャードさん(27)でした。彼は簡易式の椅子と朝食を用意しており、準備万端でした。

 夜明け前のエルパソ・ストリートとオーバーランド・アベニューの角で、リチャートさんと筆者はオルーク候補について語りました。

カンザス州から駆けつけた3人の女子学生(海野撮影@テキサス州エルパソ)

 「オルークはミレニアム世代(1989年~1995年生まれの世代)に人気があります。私もこの世代です。彼はとても親しみやすく、しかもカリスマ性とエネルギーがあります」

 リチャードさんはオルーク候補をこうみていました。

 「ただ、私は民主党候補指名争いでどの候補に投票をするのかまだ決めていません。オルークはエルパソにある国境の壁をすべて壊すべきだと主張していますが、私はそれには反対です。6月から始まるテレビ討論会を観て、彼と他の候補を比較してから決定します」

 さらにリチャードさんは、ウィリアム・バー米司法長官が3月24日に、米議会に提出したロシア疑惑に関するモラー報告書の概要についてもコメントをくれました。

 「(トランプ陣営とロシア政府の)共謀と司法妨害が認定されなかったので、トランプにとって追い風になると思います。民主党はロシア疑惑に焦点を当てるのではなく、オバマケアや国境の壁建設を含めた争点に時間を費やすべきです」

 議会民主党は争点かロシア疑惑かで意見が二分されていますが、リチャードさんは次の大統領選挙で民主党が勝利を収めるためには、前者にエネルギーを注ぐべきだという立場をとっていました。

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