世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年7月19日

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(siridhata/Viktorcvetkovic1/iStock)

 6月30日の板門店における米朝首脳会合で、両国は、実務者協議を今後2、3週間で再開することに合意した。また、米国は、金正恩を米国に招待した。兎にも角にも、交渉再開が合意されたということである。交渉チームの組成については、米側は、ポンペオ国務長官が自分とビーガン北朝鮮担当特別代表が担当すると発言、北側は、李容浩外相と崔善姫第1外務次官になると見られる。

 交渉再開は、双方の利益が一致した結果である。これに関して、ワシントン・ポスト紙の国際問題担当のコラムニストDavid Ignatiusは、7月2日付の同紙掲載のコラム‘Trump successfully played a hunch with Kim. Now what?’で、次のような観察を示している。すなわち、「金正恩は、核に加えて経済発展により同氏のサバイバルが強化されると信じている近代化主義の独裁者である。交渉再開を決めたのは、それにより制裁を解除し、経済を加速化し、恐らく今保有する核の一部を堅持するためであろう。交渉再開はトランプとの『素晴らしい関係』(トランプの言)があるからではなく、金正恩が合理的な、かつ自信に満ちた独裁者だから成された決定である」と。これは的確な観察であると思われる。

 つまり、金正恩はトランプ以上に再開を欲し、米国にシグナルを送ったのではないか。その意味で、北のペースで進んだように見える。2月のハノイ会談の後、北はポンペオとボルトン安全保障担当補佐官を交渉から外すことを要求していた。米側によると、北はポンペオが担当を続けることを了承したという。しかし、ボルトンは板門店に現れなかった。なぜか同氏は、板門店での会談の時、モンゴルにいた。米政府は、ボルトンを表に出さないことで、暗に北に譲歩したのではないかと思われる。今後ボルトンとポンペオの関係、トランプとボルトンの関係に変化が起きる可能性がある。

 今後は、米朝間で非核化の定義について、しっかりとした議論を戦わせることが最も重要である。6月30日、ニュヨーク・タイムズ紙は、暫定的な第一の措置として、北に先ず核開発を凍結させる案がトランプ政権内部で検討されている、と報じた。しかし、北が事実上核兵器国として認められることに繋がるようなことがあってはならない。この記事に対して、ボルトンは7月1日、そのような議論を国家安全保障会議内で議論したことはない、とツイッターで厳しく批判した。さらに7月2日付の同紙は、交渉アプローチについて政権内部に亀裂があると報じている。それによれば、第一の措置として北に核開発を凍結させるとの考えがある一方、ボルトンのようにあくまで核の完全廃棄がない限り制裁は解除すべきでないとの議論が対立しているとのことである。要するに見返りに何を与えるかということだが、ポンペオとボルトンの対立が暗示される。ボルトンが解任されるのではないかとの観測も一部で出てきているようである。

  
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