中東を読み解く

2019年8月5日

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 世界的な“悪法”と批判されていたサウジアラビアの「後見人制度」が8月2日、夫や親族の男性後見人の許可なしに女性が旅券(パスポート)を取得できるよう一部緩和された。同国では昨年、女性の自動車運転が解禁され、それに続く女の地位向上の一環。しかし、結婚などは依然、後見人の許可が必要で、男尊女卑社会の改革の道のりはまだまだ遠い。

(KanchitDon/gettyimages)

1000人を超える逃亡女性

 まだご記憶にある読者もいると思う。今年1月、家族の虐待から逃れたサウジアラビア人のラハフ・クルンさん(当時18)という女性がバンコクで助けを求め、世界的な救出運動のおかげでカナダに亡命した話だ。彼女は「帰国したら殺される。家族から奴隷のようにモノ扱いされた」と虐待に耐えてきた生活を明らかにし、女性が軽視される同国の実態が暴露された。

 ラハフさんのようにサウジから逃げ出す女性は後を絶たず、1000人を超える女性が逃亡中だといわれる。2017年にはマニラ空港で、やはり逃亡したサウジ人女性が追い掛けてきた親族に見つかり、サウジ航空機で強制的に連れ去られる事件も発生した。最近では、国外に逃れた女性たちが人権を無視されたサウジの生活ぶりを訴えるケースも増え、サウド王家が頭を抱えてきた。

 メッカなどイスラムの2つの聖地の守護者であるサウジアラビアはスンニ派の中でも最も厳格なワッハーブ派の牙城として知られる。同派の教えはイスラムの聖典コーランとイスラム法「シャリア」に忠実に従うよう求め、実社会ではとりわけ女性の権利が厳しく制限され、女性の人権侵害として国際社会から批判を受けてきた。

 外出ひとつをとってみても、女性たちはブルカやニカブといった全身を覆う黒いマントの着用を義務付けられ、通常は親族の付き添いが必要だった。こうした女性の行動を法的に規制していたのが「後見人制度」だ。結婚や離婚、教育、就労などについては、夫や父親、兄など親族の男の許可が必要と定められていた。

 今回の改訂により、21歳以上の女性は旅券の申請や取得を後見人の許可なしに自由にできるようになった。このほか、女性が結婚、離婚、出生届けを後見人の許可なく役所に提出することが可能になった。特に元夫の協力を得られなかった離婚女性や未亡人たちにとっては朗報である。

 就労についても後見人の許可なくできるようになったのは家に閉じこもることを余儀なくされてきた女性たちにとっては大きな前進だろう。だが、結婚については、依然後見人の許可が必要であり、また逃亡しようとして当局に拘束され、収容所に拘置されている女性は後見人の同意がなければ、釈放されない仕組みになっており、女性の権利が依然制限されていると言っていいだろう。

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