世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月4日

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 ワシントン・ポスト3月10日付でコラムニストのDavid Ignatiusが、オバマ政権は、イスラエルの攻撃を止めるために、制裁を強化したが、これはイランの政権交代につながる可能性がある、と論じています。

 すなわち、先週の米=イスラエル協議により、西側は制裁を強化し、イスラエルは取りあえず軍事行動を控えるという形で、両者の圧力が組み合わさったため、イランは交渉の場に引き戻されることになった。このまま制裁が続けば、イランは、ホメイニが「毒を飲むに等しい」と言った交渉による解決を考えざるを得なくなるかもしれない。あるいは、イランの方が性急な軍事行動に出て、報復の対象になるかもしれない。

 イランの弱みは、政権が不人気で政治構造が脆弱なことだ。オバマの制裁は、政権交代を狙っているわけではないが、イラン政権の政治的、財政的基盤を掘り崩しており、イランは追い詰められてきた。

 他方、皮肉なことに、イスラエルがイランを軍事攻撃すれば、イラン現政権への支持が増え、政権交代の可能性はなくなるだろう。

 ハメネイは西側に譲れば国内で正統性を失い、譲らなければ制裁による締め付けが続くというジレンマに陥っている。こうした中で西側が避けなければならないのは、イスラエルが過早に攻撃に出て、(1)国連決議で停戦になる、あるいは、(2)制裁が取り下げられて、今効果を挙げつつある圧力が目的を達成しないまま終わり、復讐心に燃えるイランが余力を持ったまま残されるという事態だ、

 それに、西側には「非公然活動」(軍事研究施設の破壊、金融取引の妨害等)という手段もある、と言っています。

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 先週は、オバマ=ネタニヤフ会談、ネタニヤフ演説、共和党大統領候補ロムニーの対イラン強硬論への批判など、イランへの対応に関連して色々な動きがありました。

 オバマは、イランが核兵器の製造を始めた時は軍事行動を起こす、との方針を明らかにし、イランが核兵器を製造した後、それを封じ込める、あるいは時間をかけて放棄させるという選択肢を排除したので、イランが核兵器開発を止めない限り、米=イラン戦争は不可避になったと思われます。イランへの対処は、北朝鮮への対処とは異なるものになるということです。

 問題は、イランが降りるか否かですが、イランは、核兵器開発をする意図はない、あくまで平和利用だと言ってきましたし、ハメネイも、核兵器は「イスラムに反する」と言ったことがあり、イランはこの主張を今後も繰り返すことになるでしょう。イランは自国に迫る危険を認識していると思われ、核兵器開発を進めないという政策を選択する、あるいはそのふりをすることは出来ないわけではありません。

 他方、その場合、米国とイスラエルは、イランが核兵器開発を止めたことを検証可能にせよと要求することになるでしょうが、イランとしては、そう簡単に応じず、まだまだ不確実な状況が続くでしょう。ただ、イランの軍事的暴発の可能性は少なく、また、米国の軍事行動も不確実な状況の中で発動しづらく、イスラエルも単独では行動しづらいので、すぐ大きな衝突が起こるとは思えません。

 なお、制裁の効果については、中国とインドがイラン石油を買い続ける可能性があるので、イグネイシャスが期待するほど効果があるかどうかわかりません。

 また、「非公然活動」については、イランの科学者がイラン国内で暗殺されるなど、イランは隙だらけとの印象がありますが、これをやりすぎると、イランの側も「非公然活動」で反撃に出かねません。こうした応酬は簡単にエスカレートし、危険な状況になるので、双方とも自制をした方がよいと思われます。


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