2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2012年8月20日

枠をはめるだけで機能していない法律

 地方公務員法は「枠をはめる」だけの法律であって、実質的な内容は条例の定めや人事当局による運用に委ねられているというのが法の建前である(橋本勇『新版 逐条地方公務員法』学陽書房・平成21年)。しかし、横並ぶ自治体群の中にあって独自色を打ち出す条例が制定される例は少ない。そして、まれに大阪市のように特色ある条例が制定されそうになるや、国は卒然と「法律違反」を主張して、自治体に一分の隙も与えないかのごとき厳しい態度を見せるのは、興味深い現象である。

 地方公務員法が枠の法律だというなら、明文で禁ずる規定がない以上、地方自治法に基づいて地域の実情に応じて罰則を設ける余地が全くないとはいえず、旧自治省関係者のなかにもその可能性を認める見解がある(今枝信雄『逐条地方公務員法』学陽書房・昭和41年)。

 地方公務員法に限らず、地方自治法も地方税法もそうであるが、「地方の自主性」を掲げる法律のもとで当然のように地方に対して細かく厳しい統制がかけられ、これに地方交付税等による財政統制が加わるというのが、国−地方関係の基本的構図となっている。他方で、地方公務員の給与削減問題のように、「地方の自主性」なる言葉が地方にとっては国並みの厳しい改革を免れる恰好の免罪符として機能していることもあわせて指摘しておくべきであろう。

 総務省という役所はおもしろいところで、他の中央官庁に対しては地方分権を唱えてその中央統制を牽制するが、自己の所管事項に関して地方に向き合うときは地方に対する統制色を隠そうとはしない。ちなみに、地方公務員制度は、平成19年の国家公務員法改正に相応する改正がなされておらず、すでに一周遅れとなっているが、このままでは国と地方の制度上のアンバランスは一層拡大することが予想される。

 地方制度をどうするかは国のテーマであるから、地方公務員制度についても、政府が責任をもって抜本的な改革に乗りだすべきである。

◆WEDGE2012年9月号より

 

 

 

 

 

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