橋下市長が問題提起し、注目を集めた市職員の違法政治活動。国家公務員法と異なり、地方公務員法には政治活動に関する罰則がなく、一部地方公務員によるやりたい放題を許す要因の一つとなっている。地方の問題は、自治権の問題やメディア、国民の関心の低さと相まって後回しにされる傾向にあるが、抜本的に法改正し改革を進めるべき。
(こちらは、WEDGE9月号からの転載記事です)
大阪市の問題提起と公務員制度の改革
何かと話題の大阪であるが、本年7月、大阪市において「職員の政治的行為の制限に関する条例」が成立した。同市では、昨年11月の市長選挙の際、管理職職員が勤務時間中に選挙対策に関わる公用メールを発信するなど、職員による政治活動が大々的に行われた。それが、選挙の趨勢に少なからぬ影響を与えたとみられる事態を受け、新市長のもとで、地方公務員の政治的行為を罰則付きで規制する条例の策定が企図されていた。
公務員の政治活動については、国家公務員法では罰則の担保のもとで広範な規制がかけられているのに対し、地方公務員法では規制対象は限定され、罰則も設けられていない。当初の構想では、条例により地方公務員について国家公務員並みの制限を置くことが念頭に置かれていたが、6月に政府答弁書が出され、罰則を設けることは地方公務員法に違反するとの見解が示されたことを受け、議会提出段階で罰則がはずされ、懲戒処分で対処することとされた。
この案件、舞台はたまたま大阪市であったが、本来、法律で禁止されているはずの地方公務員の政治活動がなぜおおっぴらに行われているのか、なぜ地方公務員については罰則が認められないのかという、地方公務員法の抱える本質的な問題点を浮き彫りにしている。公務員問題といえば、天下りなど国家公務員のことばかりが問題とされるが、国家公務員は約58万人であるのに対して地方公務員は約279万人と、その数は圧倒的に多い。地方の公務員制度にはもっと切り込む必要がある。
わが国の公務員制度は、戦後改革の一大テーマとしてGHQが最も関心を注いだ問題のひとつであり、旧官僚制の解体と近代的人事行政の確立を目指して改革が進められた。職員の服務に関する二本柱は労働組合と政治活動の規制であり、激しいせめぎあい、紆余曲折を経て、昭和22年に国家公務員法がいったん成立をみる。