あの挫折の先に

2012年9月14日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

“常識”の理由を、立ち止まって考えてみる

 辻口はある時、トイレ掃除に使ったホースをなぜ元の場所に戻すのか、その意味をよくよく考えたという。この行為こそ、辻口が飛躍するきっかけとなる。

 「もし、元の場所に戻さなければ、たとえキレイに片付けたとしても、次に掃除する人に、ホースを探す手間がかかってしまう。当たり前ですが、なぜ、こうしなければいけないのだろう? と立ち止まって考えてみるんです。ケーキのスポンジを180度で焼くのが常識だとしたら、あえて120度で焼いてみなければ、180度で焼く意味は分からない。常識がなぜ常識たり得るか確かめることで、自分の身になり、納得して先に進めます」

 辻口がこう考えた理由は、“早く一人前になりたい”という思いからだった。また、将来開く自分の店の参考にするため、有名な洋菓子店巡りも行ったという。

辻口の作るスイーツは、グラデーションを利用したものが多い。これは辻口の日本人としての誇りだという。「日本人は、真っ赤なフェラーリをいきなり作れる感性は持っていません。しかし、和服の中間色や、水墨画のにじみなどのグラデーションを美しいと感じる感性があります。海外の人は逆にこの感性を持っていないので、日本人にしか作れないクールなスイーツを作って、世界に日本的な感性を広めていきたいんです」

 「どんなスイーツが販売され、売れ筋は何か、商品の見せ方や照明はどうなっているかなど、こと細かにデータをとりました。また、有名店が使っている素材を知るため、夜中に店舗のゴミ箱を漁ったこともあります。アーモンドや卵など、材料の空き袋を見て、メーカーや産地を調べたんです」

他人のモノサシで
“一流”にはなれない

 辻口はさらに、自分が取る行動すべての意味も考えるようになっていく。

 「夜、先輩に遊びに誘われても、行かなくなりました。僕は早く自分の店を持ちたかったから、お菓子作りの練習をしていた方が将来の自分の糧になると思ったんです。一流というのは、文字通り“一本の流れ”。周りと群れている人間が淀みながら一本の流れになることはないんですよ」

 職場で“アイツがこれくらい働いているなら、オレもこれくらい”など、他人を物差しにして自分を計る人も多いだろう。しかし、「そういった人間が突出することはない」と辻口は語る。

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