世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月12日

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 9月3日付ウェブDiplomat誌で、T.P.Sreenivasan元インド国連大使は、中国の台頭を背景に、米印関係が緊密化していることを歓迎する、と述べています。

 すなわち、マレーシアでアジアの安全保障などに関する円卓会議があったが、ほとんどの人が米中間の新冷戦の可能性を念頭に置いていた。

 しかし、出席者の中に、中国の台頭は無害であると表明した人がいたのには驚いた。マレーシアのラザク首相は、中国の台頭の肯定的な影響について語り、マハティール元首相は、中国はアジアを植民地にしたことはなく、近代中国より近代欧州こそ警戒すべきであるとさえ述べた。

 しかし、中国自体の認識が、こういう論理に疑問を投げかける。アセアン駐在中国大使は、南シナ海での中国の立場を主張し、それへの反論を軽くあしらった。また、中国の学者は、米国との対決は不可避であると述べた。中国自身、中国の台頭で弱小国は2つのボートに足を置くようになっていると評価している。多くのアセアン諸国はそういう評価に同意している。インドネシアの外相は、二つの側のいずれかを選ばせられることは避けたいと述べた。

 しかし遅かれ早かれ、アジア諸国は、中国の自己主張の問題に対処しなければならなくなるだろう。インドと米国はこの現実を良く理解し、協力を深めている。米国はアジア重視にシフトしている。米国では、アジアの重要性を前提に、アジアへの関与のあり方が議論されている。インドも、中国の台頭がもたらす問題を良く理解している。中国とは、国境問題があるし、北京のパキスタン支持がある他、中国の海軍近代化は中国によるインド洋と太平洋におけるシーレーンの支配の可能性を提起する。インドとしてはこれは受け入れ難い。

 米印関係は、アジアの力学の変化で利益を得ている。6月の米印外相会談は友好裡に行われた。印米間には問題はあるが、より大きな目標で両国は共通の利害を持っている。南シナ海、東シナ海での緊張がある中で、米国はインドを新しいアジア安全保障体制の要と見なしており、パネッタ国防長官の訪印はそれを示すものであった。

 米印間の戦略対話後の共同声明では、「米国とインドはアジア、インド洋、太平洋における平和、安定、繁栄について共通するビジョンを持ち、開放的で均衡のとれた包摂的な構造のために協働することにコミットした」とされている。これは空虚な言葉ではない。米国はアフガンでインドと協力する用意を示している。軍事協力も深まっている。90億ドルの防衛装備品が米国の会社に発注され、技術移転も合意されている。もちろんインドは中国との関係改善も狙っている。学者には、中印関係の問題を処理する外交上の仕組みを提案する人もいるが、これは中国の姿勢に鑑み、機能しないだろう。インドは、中国との2国間というよりも、地域環境の中で自らの安全保障を探求せざるを得ず、その意味で、米国のより大きな関与は重要である、と述べています。

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 スレーニヴァサン大使は、インド外交界で活躍した人です。この論説では、米印関係が最近、中国の台頭と自己主張を受けて、緊密化していることを指摘しています。

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