2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年10月11日

中国の本音は何か

 中国は国有化の撤回を求めているが、日本の世論をみれば、政府が撤回に応じる可能性はない。今回、日本は国有化という利益を得た。では、中国側は本音では、その引き換えにどんな利益を欲しているのか。

 賈慶林氏は河野氏らに訪中団に対し「争いがある釣魚島(尖閣諸島)問題を正視すべきだ」と発言した。日本は尖閣諸島について「領有権問題は存在しない」という立場だが、中国は領有権問題を認めるよう求めている。

 その辺りに落としどころがありそうだ。

棚上げの再確認を

 いずれにせよ、今回の事態を沈静化させるには、日中両国政府が冷静な話し合いを通じて領有権争いの棚上げを再確認する以外に道はないだろう。1972年、当時の田中角栄首相と周恩来首相は「小異を残して大同を求める」(周首相)ことで一致し、戦争状態を終結させ、国交を正常化させた。

 国交正常化の交渉、さらには78年締結の日中平和友好条約の交渉で、尖閣問題は棚上げされた。日本は領有権問題の存在を認めていないが、今、まさに尖閣をめぐる対立が起きているのは確か。まずは対立の存在は認め、対話を始めるべきではないか。

主張認識の譲歩案も

 ここまで執筆した時点で、共同通信の独自ダネが配信された。日本政府が尖閣をめぐる日中対立について「領土問題は存在しない」との原則を堅持しながら、中国側の領有権主張は「認識している」との立場を打ち出す妥協案を検討中という記事だ。

 一定の譲歩だが、中国側が納得して関係改善に踏み出すかどうかは分からない。今後も日中間で激しいやりとりが続くだろう。両国首脳が英断を下し、対話解決に向けて歩み寄るように期待したい。


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