佐藤忠男の映画人国記

2012年12月27日

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 私は若い頃、郷里の新潟と隣の長野の両県にまたがる仕事をしていて、長野の人は新潟の人より概して雄弁であるという印象を持った。まあ私がつきあう範囲など限られていたので県民性がどうのという議論の例にはならないと思うが、映画人で議論の気迫でいちばん有名な人のひとりが撮影監督の宮島義勇(1909-1998年)で長野県上高井郡出身だと知って、なんとなくなるほどと思ったものである。東宝争議の闘士で「人間の條件」(1959,61年)その他のリアリズム系の映画の名手だった。

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(c)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」制作委員会

 南安曇郡豊科町(現安曇野市)の出身の熊井啓監督(1930−2007年)も、雄弁家とは違うが議論では決してひるまない人だった。代表作のひとつの「日本の黒い夏—冤罪」(2001年)は、松本サリン事件をとりあげたものだが、あの事件で冤罪を受けた実在の主人公は母の知人だったとかで、非常に身近に感じて取り組んだものだったそうである。私の好きな作品に「深い河」(1995年)があるが、これはカトリックとヒンズー教と仏教の一致点を求めたものであり、これをインドのデリーの映画祭で見たとき、会場がどよめくような反響があったことが忘れられない。

 崔洋一監督は佐久市の出身。「血と骨」(2004年)はひとりの特異な在日韓国朝鮮人の生涯を見据えた力強く重厚な作品である。この人も議論は緻密でしっかりと進める人である。

 降旗康男監督は松本市浅間温泉出身である。大手の撮影所で伝統的な技術を身につけた人が殆ど第一線を去ってしまったいま、スターシステムはなやかなりし頃の良い意味で大衆性のある作風を伝える貴重な存在となった。「あ・うん」(1989年)や「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)など、安心してたのしめる作品では屈指のひとりだと思う。最新作は久しぶりの高倉健主演作として評判になった「あなたへ」(2012年)。しみじみとした情感のこもった佳作だった。

 東映時代劇や任侠映画のベテラン監督だった小沢茂弘(1922−2004年)も長野県人である。代表作は「三代目襲名」(1974年)だと思う。

 「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなど、VFX技術を活用して昭和の風俗を情感豊かに再現した山崎貴も松本市出身。

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