あの挫折の先に

2012年12月19日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

ツライ経験、その後の自問自答で
つかんだ「ものを売る極意」

 「なんとかしますよ!」──この答えのどこがいけなかったのか。彼はまず「コミュニケーションは不明確であってはいけない」と話す。

 「実を言うと、他メーカーのお酒が入ると聞いた時、思わず『なぜですか?』と理由をお伺いしてしまったんです。この時『明確な答えを出してくれなかったじゃないですか』と言われました。よく聞いてみると『なんとかしますよ』という答えを聞いて、果たして私が同じ条件を提示してくれるか、結果が不安になったと仰っていました」

 彼が付け加える。

 「学生時代の人間関係は利害関係がなく、責任も発生しにくい。だから“多分”とか“だと思う”といったあいまいな言い方が許されるのでしょう。私は、相手の気持ちも考えず“多分”で終わらせていたのです。もっと、状況を聞くべきでした」

 ようするに、「相手の心の動きが視野に入っていなかった」。

 「私はその時、もう他メーカーが入ってくる寸前なのか、まだ余裕がある話なのか、まったくわかっていなかったのです。もっと相手の話を聞いていれば、早く明確な答えがほしいのか、それとも、時間をかけてでももっといい条件がほしいのかわかったはずですよね。そもそも、相手の状況や気持ちがわからず、的確な答えが出せるわけがないのです」

今はサッポロビールが誇る優秀な営業マンとして顧客の信頼も集める早川氏だが、入社後は大きな挫折も経験していた。

 この経験のあと、早川は意識的に「話すことより、訊ねることの方を多くした」と語る。営業は、どうしても自社の商品のセールストークなど、話したいことが多い。沈黙も嫌だからと一生懸命話す人も少なくない。だが……。

 「もし顧客の側に立てば、ニーズに合っていない話など聞く意味はありません。新入社員や若手は特に、自分が一方的に喋り、相手に聞く回数が少ない。しかし、まずは相手の話を聞くクセを付けると、相手の状況や考え方などがわかってきて、的確な答えを返せ、すなわち、商品が売れるようになるんですよ」

POINT
営業は、恋愛に似ている。筆者は別の雑誌の取材で、恋愛に関して評論する男性の話を聞いたことがある。彼は飲み会の時に必ず「好きな食事は?」といったトークを織り込むと言う。食事に誘う時、仮に野菜が好きな女性を、美味しいお肉が食べられる店に誘っても喜んでもらえないからだそう。逆に「野菜が好きって言ってたよね?」などと相手の好みがわかった上で誘うと、“最低一度はデートできる”と言っていた。相手のニーズを調べずに営業をしても、ムダばかり多くなってしまうのではないか。

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