中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年1月28日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 また、日本経済にもプラスにならない。採用抑制や正規雇用者の非正規雇用者への代替などで人件費を抑制するばかりでは、賃金雇用がなかなか盛り上がらず、消費需要は伸びなくなる。景気も良くならないし、デフレもなかなか解消しない。

 必要なのは、企業が拡大均衡的に業容を拡大する中で収益を増やし、雇用賃金を増やして日本全体の需要を引き上げていく好循環だ。そして、今回の給与増減税はその好循環をもたらす一助となる可能性がある。

企業収益は上げられる

 もっとも、給与増減税だけで企業が活性化し、賃金雇用が持続的に拡大すると見るのは早計だ。賃金雇用の拡大が乏しい背景に日本企業の収益力の低下があることから、収益力を上げる他の施策が合わせて実行されることも不可欠だ。

 他の施策とは、円高、電力制約、高い法人税率、FTA締結の遅れ、硬直的な労働市場、厳しい環境対応、のいわゆる六重苦に代表される、企業活動の過度の足かせとなっている制約を外していくことに他ならない。

(図表2)日本の主要業種別ユニット・レーバー・コストの推移
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 六重苦すべてを一気に解決するのは難しいが、すでに円安が進み、法人税の実効税率を下げる投資減税や今回の給与増減税も出てきている。緊急経済対策や大胆な金融緩和による景気浮揚も企業収益を後押しするし、今後固まる成長戦略や規制改革も構造改革を通じて企業を取り巻く制約を軽減することが期待される。

 一方、雇用賃金面からは、必要となる方策をまた別の視点からみることもできる。ユニット・レーバー・コストの推移を主要業種でみると、とりわけ建設の比率がほぼ100%となる一方、金融・企業向けサービスの比率が大きく低下している(図表2)。

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