2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月20日

 日本の過去10年の不安定への疲れと、安倍総理の政治的手腕により、今や、安倍総理は、政治目標を達成する最高のチャンスをつかんでいる。

WSJ

 参院選で勝利を収めた安倍総理は、選挙前に曖昧にした、経済改革を推進しなければならないであろう。

 12月に衆院で勝利して以来、安倍政権は、財政出動と円安政策を強調してきた。

 今や、問題は、安倍総理が、如何に強力に、「第三の矢」と呼ぶ日本の改革に進むかである。これらは、日本経済を自由貿易によって競争に晒し、労働者の解雇と雇用をより容易にし、例えば小売業における国内カルテルを壊し、土地使用に関する法律を改正して、より多くの開発を可能にし、そして、法人税を減税する、といった、規制緩和を含む。

 安倍総理がこれらの面で、選挙期間中に慎重であったのは、これらが、国内の強力な支持層への挑戦となるからである。一つの例外は、TPP交渉への日本の参加支持である。このような貿易開放は、日本が国内の意欲(animal spirits)を刺激するために必要とする海外からのショックとなり得る。

 ひとつのワイルドカードは、安倍総理が、彼への委任を、ナショナリスト的な外交政策に、どの程度用いるかである。彼は、軍に対して制約を与えている憲法を改正したがっている。

 しかし、経済に集中するのが賢明であろう。安倍総理は、安全保障上の目標のほとんどを、適切に選択した武器の購入と、既に密接な米国との安全保障上の紐帯を深めることで、達成できよう。

 安倍総理が、日本の安全保障に対して出来る最大の貢献は、より速い経済成長を促進することである。より速い経済成長だけが、日本の負債をファイナンスすることができ、中国の地域における優位を防ぐことのできる防衛支出を可能にしてくれる。「安倍維新」は、経済を第一にすることを必要としている。

 * * *

 WPもWSJもいずれも、経済改革の進展に期待し、経済成長が安全保障を支える基盤となることを指摘していますが、本来、経済と安全保障の間には優先順位は無く、両者は同時に進めるべきものです。経済成長により財政赤字が減れば、財政当局に対して防衛費増額を言いやすくなるという側面はあるかもしれませんが、日本の防衛予算が国家予算に占める割合は、非常識に低いのですから、防衛予算の増額に、経済成長を待つ必要はありません。


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