2024年5月5日(日)

Wedge REPORT

2024年1月24日

 「子どもは一生懸命。受験ビジネスに巻き込まないで」

 昨年に息子が中学受験した高橋智子さん(仮名、40代)は、そう思わずにいられない。今年も入試のシーズンとなったが、都内の入試が2月1日以降であることから、1月に入試を実施する都外の私立中学校では、受験生が入試の練習や滑り止めを兼ねて殺到。毎年1万人以上もの受験生が集まる中学もある。受験料収入だけでも、多額になると見られる。

中学受験シーズンが到来した(y-studio/gettyimages)

 東京都内では、私立中学182校、合計2万5619人の入学者選抜試験が実施され、2月上旬は難関校や人気の高い学校の試験が集中する。最初に本命の学校の試験を受けるか、早い段階で滑り止めを受けて合格を掴んでから難関校にチャレンジするか――。入試の申し込みが前日深夜までなど、ギリギリまでオンライン申請できるため、各家庭は受ける学校の戦略を練る。 

 智子さんは昨年、息子が通っていた塾から「早い段階で絶対にどこか合格したほうがいい」と、1月に行われる偏差値40台の中学の受験を勧められた。だがそれは、九州地方にある中学が東京会場で行う試験だった。「たとえこの一校しか合格しなかったとしても、そこに通うことはない」と、受験はしなかった。

 私立中の受験は、2月1日の午前と午後、2月2日の午前と午後など、午前・午後で分かれて行われる。そして、学校によっては、何度も試験が実施されて複数回を受けることができる。1回当たりの受験料は2万5000円前後。受験料の設定も各校独自だ。

 例えば、合計4回の入試を実施して4回分をまとめて申し込むと「セット割引」があるケースもあれば、都度一律に受験料をとるケース、入試を受けるたびに支払うが回数を重ねると割り引かれるケースなどさまざま。智子さんは「合格したいと思えば、何回でも必死に受ける。まるで受験生の足元を見ているようだ」と疑問に感じ、「ある中学には、ビジネスの匂いしか感じられなかった」と振り返る。

 多くの学校で、学校説明会や文化祭の見学、入試の申し込みを外部の専用サイトから行うシステムになっている。その「ある中学」の学校説明会も、同様に専用サイトから学校説明会の予約を入れる必要があった。ところが、智子さんがサイトを開いて予約開始時間ぴったりに予約ボタンをクリックしても、説明会は毎回少人数ですぐに定員が埋まってしまった。智子さんは「なかなか予約が取れないと思うと必死になる心理を突いている」と感じた。

 やっとのことで予約できた説明会に参加すると、学校の幹部が口頭で「入学できる定員を倍にする予定だ」と言及した。しかも何回も入試を実施し、何回受験しても3万円しかかからない。智子さんは、「偏差値も低い。ここなら合格できる」と、完全な滑り止めとして受験を決めた。しかし、いざ本番を迎えると定員が増えるわけでもなく、学校側の戦略が奏功してか受験生が殺到。入試倍率は急上昇した。


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