2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月25日

 もう1つの特筆すべき変化は、安倍氏が集団的自衛権の行使を検討するための専門家会合を設置したことである。この潜在的変化は米国にとって喜ばしい。

 安倍氏の靖国参拝は、近隣諸国との関係改善には役立たないが、それでも安倍氏の個人的見解と日本の安全保障改革を混同すべきではない。日本の新戦略とNSCは、安全保障問題に対する迅速かつ重要な決定をするのに必要不可欠なもので、中国だけを念頭に置いているわけではない。日本を見るときは、安倍氏だけではなく、同国の置かれた安全保障環境や米国の主要な同盟国としての役割、アジア太平洋地域の安全保障への積極的貢献者としての能力が考慮されなくてはならない、と論じています。

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 上記論説は、現在安倍内閣が行っている日本の安全保障政策の改善は、安倍政権の右翼的傾向のためでもなく、また、最近の中国の挑発的行動に対する直接の答えでもなく、従来アメリカが、日本の民主党政権時代から希望していたことであり、東アジア安全保障にとって好ましい措置であると述べています。

 その指摘は極めて正しいでしょう。安倍内閣は、歴代の内閣が行うべくして行わなかった日本の防衛態勢正常化の改革を推し進めているだけです。

 民主党政権時代どころではありません。東アジアの安全保障についての日本のただ乗り論は冷戦時代の方が激しく、米国議会では日本に防衛費増額を要求する決議作成の動きがあり、当時ソ連の脅威の下にあった中国は日本に対してGDP比3%の防衛費を要求したこともあります。集団的自衛権の行使の問題などは60年、70年安保以来の懸案です。

 安全保障問題は安全保障問題、靖国問題は靖国問題であり、これら2つを結び付けるべきではありません。上記は、そういう議論です。

 それは、日本及び同盟国であるアメリカにとっては正論です。しかし、中国としては、日本の防衛能力の強化は中国の国益に反するのでもとより反対であり、それに反対するプロパガンダの一環として靖国問題を取り上げているのです。この2つを切り離すべきだと言う議論が出て来ていることは、日本としては歓迎すべきことです。

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