2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月25日

 1月10日付け米フォーリン・アフェアーズ誌のサイトで、 J.Berkshire Miller米CSIS研究員が、日本の安全保障改革について、そのすべてを安倍首相の個人的信条や中国への対抗という文脈で説明しようとするのは間違いであるとして、日本の安全保障政策の妥当性を論じています。

 すなわち、日本の新たな国家安全保障戦略の策定は、同地域に精通している者であれば驚くべきことではない。

 安倍首相の靖国参拝は、事態を更に悪化させる決断ではあったが、安倍氏の個人的信条と近年の日本の再軍備を一緒に語ろうとするのは誤りである。

 日本の安全保障戦略が主として中国に焦点を当てたものだということ、更には東シナ海をめぐって日中関係が劇的に悪化しているというのはいずれも事実である。

 したがって、日本の国家安全保障戦略が、中国を注視し、自衛隊の能力を拡大させようという反射的な動きであると解釈する向きがあるのも無理はない。だが、この解釈には4つの欠点がある。

 第1に、防衛費の増額、安全保障における指揮系統の集権化、自衛隊の柔軟性の確保といった昨今の改革は、民主党政権時代から日米で議論されてきたものである。

 加えて、「動的防衛力」という概念の下、積極的で柔軟性を持ち、機動力に富んだ自衛隊を目指すことが掲げられたのは、2010年の防衛大綱である。

 第2の誤解は、日本が歴史的な再軍備に向かおうとしているという解釈である。確かに、安倍政権は防衛費を増額しようとしているが、そのほとんどは人件費と普天間の移設費である。その他、F-35の調達に10億ドルの費用を投じるといっても、それも日中関係が悪化する以前から発表されていたことである。グローバルホークや水陸両用車、オスプレイの導入は、尖閣対処向けのものではあるが、これも相対的には安価である。

 第3に、安倍氏は尖閣問題で強硬路線を説きながらも、日本と中国は経済的に強い結びつきを続けている。中国は依然日本にとっての最大の貿易相手国であるし、日中は韓国とともに3国間の自由貿易協定に関する協議を続けている。更に、東シナ海をめぐる問題についても、日本は「中国とともに不測事態を防止する枠組み作りをしよう」と言っているのであり、その戦略は決して事態をエスカレートさせるものではない。

 第4に、日本の安全保障上の懸念には、北朝鮮との紛争や体制の崩壊という要素もある。人々は、日本の安全保障が尖閣問題だけに注力しているわけではないことにも目を向けるべきである。


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