うつ病蔓延時代への処方箋

2014年3月4日

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 うつ症状で休職した社員が復職する際は、多くの場合で主治医と判断が異なります。産業医は基本的には治療するのが役割ではありません。治療に携わった医師は改善したと判断し復職可能としますが、産業医が見るのは就労を含めた社会生活ができるのかどうか。確かにうつ症状は落ち着いていても、復職するには会社で働ける状態であることが前提になります。まだ、無理だと判断した場合は社員に理由を伝え、復職までの課題を提示して丁寧に説明します。

 大事なことは問題点の「見える化」です。就労禁止を伝えるだけでは、就労に向かう気力を削ぎかねません。対立関係を生む可能性もあるので気を使います。しかし丁寧な対応をし「見える化」することで大半の方が納得したうえで、復職までのリハビリを続けて下さいます。職場に戻っても、すぐに再発・休職することは本人にとっても辛いことですから避けなければいけません。

社員のため会社に頭を下げることも

―― 労働安全衛生法の改正が近く提出され、今国会で成立する見込みです。すべての企業にストレスチェックが義務付けられ、当然のこととして産業医はメンタルの知識が必要になるのですが、すべての産業医が対応できているわけではありません。

矢島:産業医になるためには、日本医師会認定産業医制度に基づく50単位以上の研修を受け「認定産業医 」の資格を得なければなりません。また、5年ごとの更新時にある研修でメンタル分野を選択することで少しは対応できます。最近はメンタル研修を受ける産業医が増えています。しかし、研修だけでなく、もっと実践的なことを学ぶ場が必要だと思います。

 大半の企業は産業医に「メンタルの経験者」を求めます。しかし、経験を積む場が少ない。産業医だけでなく産業保健師が経験を積む場をつくることで、より産業保健に役立つ人材が増えるでしょう。保健師は女性が多いこともあり、子育てしながらでも仕事をしやすい産業保健分野の希望者は多いのに、経験する場がないという話を耳にします。今後の課題です。

 ストレスチェックについては、社員全員分を産業医が見て分析する作業は考えにくい。コスト的な面からも外部機関に委託することになるのでは。大企業、中堅企業では、メンタルヘルスサービスを展開するEAPを活用し、すでにストレスチェックを実施しています。しかし、それが活用されていないことに問題があります。

 ある部署に不調者予備軍が多いという情報を、産業保健スタッフが共有できていない。また、個人的な問題ならば外部のカウンセラーと話をすることに意義がありますが、社内の体制の問題、上司の問題などはカウンセラーと産業保健スタッフが連携をとることで、初めて会社にフィードバックされ対応が可能となる。このようなEAPが必要だと痛感しています。

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