世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月22日

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 エコノミスト誌6月7-13日号は、オバマが新たに打ち出したCO2削減策は米国を変えるだろうと高く評価し、今のオバマの関心は、中間選挙における民主党の運命よりも気候変動にあるのかもしれない、と言っています。

 すなわち、6月2日、オバマ大統領が、2030年までに発電所のCO2排出量を2005年のレベルから30%削減すると提案したことは歓迎できる。米国で最大のCO2排出源は発電所(総排出量の3分の1を占める)であり、提案は、米国大統領によるここ数十年で最大の気候変動対策と言える。

 提案は政治的にも重要な意味がある。第一に、民主党が上院での多数維持のために選挙で勝つ必要があるいくつかの州は、石炭生産州でもある。当然、これらの州ではCO2排出規制は不人気なので、今回の提案で、11月に共和党が上院を奪還する可能性は高まるだろう。第二に、現在、2015年末の調印を目指して各国が温室効果ガス排出削減条約について交渉中だが、オバマ大統領の提案はこの種の国際的合意の実現を後押しする効果があるだろう。

 米国内では激しい党派的反応が起きている。左派は、化石燃料と決別する一歩として歓迎し、右派は、米国の企業と消費者に新たな出費を強いて、公害大国の中国を助けるだけであり、結局、気候にマイナスの影響を与えると糾弾している。しかし、どちらの主張も誇張されており、実際のところは、提案は地球を救いはしないが、一定の改善をもたらすだろう。

 提案が実施されれば、米国のCO2総排出量の約5%が削減される。気候変動抑止に必要な削減量から見ればわずかだが、単一の措置の成果としては大きい。また、米国の発電所の排出量は2005年以来、主に不況とシェールガス革命により、既に15%減っており、2030年までに残り15%を減らすのはさほど難しくないだろう。電気料金の値上げや雇用の減少はあるだろうが、石炭火力発電所が減る結果、CO2のみならず、二酸化硫黄等の有害物質が減れば、多くの命が救われる。

 もっとも、今回の提案は最善の策ではない。議会が炭素税を承認するか、炭素市場を創って、排出CO2に価格をつけ、削減方法の選択は企業や個人に任せるのが最も安価で理想的なやり方だ。しかし、次善の策であっても、何もしないよりはましであり、その恩恵(政府試算で、健康促進効果として500億ドル強)は、コスト(電気代値上り分の90億ドル弱)をはるかに上回る。大統領としてたそがれの時期に来ているオバマ大統領の関心は、民主党の運命よりも、気候変動の方にあるのかもしれない、と述べています。

* * *

 6月2日、オバマ大統領は、2030年までに発電所のCO2排出量を2005年のレベルから30%削減すると提案しました。これを、地球温暖化防止のために有益であるとして支持する、環境重視の立場からの論説です。

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