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2014年9月25日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 チェン氏の中国での報酬は5000万元(約10億円)にも上り、ジェット・リー(中国名は李連傑)の6000万元に次ぐ。香港で彼は40社余りの会社を所有しており、息子チャン氏は陳祖明名義で33社の所有者となっており、大部分は母親の林女史が社長を務める。チェン氏の名前は商標登録もされ、東南アジアには成龍コーヒーブランドもある。彼らのビジネスは秘密のベールに包まれ、株主に西アフリカのリベリアの会社も含まれ、背景が不明なオフショアの会社さえある。

* * *

【解説】

 日本で一世を風靡するほど活躍したジャッキー・チェン氏だが、その後、ほとんど日本の芸能界では名前を聞かなくなり、彼の名は映画ぐらいでしか見られなくなったが、それは彼の中国での活躍を見れば合点がいくだろう。

 チェン氏の中国での成功は中国芸能界の発展の歴史とも重なっているといえる。宋祖英女史(江沢民元国家主席との関係が噂され「国母」とさえ称される)にさえも馴れ馴れしく抱き着いた大胆不敵な態度は政界との強いコネクションによる裏付けもあった。背後に控えていたのは曽慶紅元国家副主席のようだが、周永康更迭が公表され、その次に江沢民グループの名が取り沙汰される中で江元主席の直の子分的存在だった曽慶紅氏及びその弟の凋落がチェン氏の息子逮捕に関係しているであろうことはこのレポートからも窺える。ただチェン氏の尋常ならざる中国への接近ぶりは北京の中央政府への反発が強まる香港においても目に付くようで、本記事では彼の行動に批判的だ。

 曽慶紅元国家副主席の弟が中国芸能界のフィクサー的存在だった事は日本ではあまり知られていない。中国では何をするにも権力者とのコネがなければ成功できないだろうが、チェン氏はうまく入り込んで政治協商委員という名誉タイトルも手に入れ栄華を極めたが、息子の麻薬問題でケチをつけてしまった。

 本記事では今回の息子の逮捕が、周永康逮捕とそれに伴う江沢民派とのいわば権力闘争が背景にあることを示唆しているが、そうではない可能性にも少し触れておきたい。それは周永康更迭に伴った検察、警察を牛耳る政法機関の自己アピールのためにチェン氏の息子が生贄になった可能性もある事だ。機構改革で整理統合されない為には、部門の存在意義を訴えねばならず、警察が著名芸能人の問題を取り上げて捕まえるのは重大犯罪を取り締るより手軽でアピール効果が大きい。買春容疑で有名監督が逮捕された事もこうした面を示唆する。軍の機構改革に際して各部隊が盛んに訓練を行うのと似ている。政法機関が自らの仕事ぶりをアピールのために問題を抱える有名人を捕まえるという側面は無視できない。

 今回の「虎退治」に絡んでいるか定かではないが、中国芸能界での今の関心事は来年の旧正月に放送される番組「春節晩会」の行方である。通常は前年7月頃から半年かけて番組制作が行われるが、今年は9月中旬になっても着手されていないと言われる。中央テレビのプロデューサーやアンカーマンが拘束され、捜査が進められており、こうした政治状況も番組制作に影響しているかもしれない。

 チェン氏息子の逮捕が芸能界での汚職取締りの幕開けなのか、権力闘争のあおりを受けたものか、現時点では分からないが、中国芸能界やチェン氏の動向に今後ますます目が離せない。

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