2024年11月21日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2015年3月30日

「マッサン」でもおなじみ
かつてニシンで栄えた余市

 NHK朝の連続テレビドラマ「マッサン」。主人公のマッサンとスコットランドから来たエリーが、苦労しながらニッカウィスキーを作り出す話です。主な舞台は北海道の余市。ここはかつてニシンで栄えた町であり、ニシン御殿も出てきます。ニシン漁のために、もともと住んでいる人に加え、大勢の出稼ぎ者が集まり「夢の街、それまでの経歴に関係なく、敗者が復活できる街」と表現されていました。ニシンが産卵のため湾に押し寄せてきていた当時は活気があり、多くの漁船、漁具、獲る人、加工する人、売り買いをする人と、多くの雇用が生まれ、お金も動きました。ニシン御殿はその象徴です。

 当時は、魚の持続性を考えて来年の分を残すなどという考えが出るわけもなく、ひたすらソーラン節を歌いながら、春に産卵に来るニシンを産卵場で待ち構えて、何年も獲り続けてしまいました。その結果、ニシンの資源が減り始めているという意識が希薄なまま、ある時「ニシンはどこに消えた?」という悲惨な結果になってしまい現在に至っているのです。

 日本では今でも、生き残って産卵に来ている僅かなニシンを獲り続け、極少ないその漁獲量に対して、今年は前年に対して多い少ないと一喜一憂しています。数十年単位のグラフを見て頂ければ、これが、いかに意味がない比較かお分かりになるかと思います。日本の水揚げはかつて100万トン近くありましたが、ここ10年の平均では僅か5000トン弱しかありません。 

 一方で、同じ太平洋のニシンである北米のカナダ・アラスカでは両方で約8万トンの漁獲枠となっています。数の子は増産続きで日本のマーケットは供給過剰になっており、今年は漁業者が操業を見送るケースが出ています。数の子の原料として売れなくても、餌やフィッシュミールに処理してしまうことは可能です。しかし、漁獲枠できちんと管理している国の漁業者は、需給調整が進めば再び需要が回復する大事なニシンを、安い価格で処理してしまおうとは考えません。卵を産ませて資源を持続的にしておくのです。

 日本のニシンのケースように獲り過ぎて資源を壊してしまえば、低迷を続ける漁獲に悩まされ続けるだけです。日本は、ニシンがたくさん獲れていた1960年より以前に、どれだけの獲り過ぎてしまったニシンを肥料等で処理し、産卵の機会も持続性も奪ってしまったことでしょうか。

産卵前の白子がたっぷり入ったニシン。資源の低下が慢性化しているのに、なぜ数少ない産卵に来た貴重なニシンを獲り続けてしまうのでしょうか

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