世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月9日

 筆者のヨッフェは、ポーランド生まれのユダヤ系で、西独を経て米国で教育を受けた人物です。ドイツの新聞紙、「Die Zeit」の主筆を長年務め、米国でも諸研究機関・大学に籍を置き、欧米をまたにかけた現代の代表的識者の一人です。その彼が、ここではオバマ外交に対して「6年間、何も学んでいない」と、愛想を尽かしています。

画像:iStock

 すなわち、5月9日「戦勝記念日」でのモスクワ軍事パレードは、そのものものしさで世界の心胆を寒からしめたが、西側首脳は参列せず、プーチンにとってはさびしい結果に終わった。

 オバマ大統領に歴史感覚があったなら、ワシントンで単なる戦勝記念に終わらない心温まる集まりを組織したであろう。米国ばかりでなく他の国々をも利した、パックス・アメリカーナが70年前始まったことを寿ぐために。

 70年前の米国は現在と同じく疲れており、ルーズベルトは米軍を2年以内に欧州から撤収することを告げている。しかし、ルーズベルトはヤルタ会談の2カ月後に死んでおり、後任のトルーマンの時には冷戦が始まっていた。トルーマンは米軍撤収を止め、1947年にはジョージ・ケナンが「X論文」でソ連封じ込め政策を発表した。ケナンは古典的なバランス・オブ・パワーに基づく安定維持を定式化したが、現在のホワイトハウスがこの論文を読んでいるとは思えない。

 また、当時の米国は国連、NATO、IMF、GATT等の国際体制を作り上げた。これらは米国の力が相対的に低下した現在でさえ、パックス・アメリカーナの基礎として、安全保障、自由貿易、航海の自由、成長と安定をもたらし、米国のみならず他国の利益にもなっている。

 しかし、オバマ大統領は、挑戦国を封じ込める代わりに、自分を封じ込め、拡張主義国を抑止する代わりに、自分自身を抑止する。中露が軍拡をしている時に軍事予算を削減している。もし、米国が欧州に本格的な戦力を保持していたならば、プーチン大統領は、ウクライナに侵入していないだろう。

オバマはイランを中東のバランス要因として使おうとしているが、これは全くの幻想である。イランは地域の覇権国になりたいのであり、米国の思うように動くはずがない。

 超大国は、手をゆるめることを許されない。ウィルソン大統領は1919年に国際連盟から手を引いたことで第2次世界大戦への道を開いたし、カーター大統領は1977年、「アメリカは、共産主義に対する過度の恐怖を捨てた」と宣言したが、その2年後にはソ連のアフガニスタン侵攻を招いた。

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