国内初の幹細胞移植による膝半月板の再生
東京医科歯科大で数年内に実用化

関矢一郎・東京医科歯科大学再生医療研究センター長・インタビュー


中西 享 (なかにし・とおる)  経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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逸脱した膝半月板損傷の患者に対して自分の幹細胞を移植して、修復、再生させる再生医療の臨床研究が、東京医科歯科大学の再生医療研究センターで7月下旬から始まる。日本国内に潜在的には2500万人いるといわれる加齢などが原因の変形性膝関節症はこれまでは完治が難しく対症療法しか望めなかっただけに、患者にとって朗報となる。この幹細胞移植を手掛けてきた同大学の関矢一郎・再生医療研究センター長に聞いた。

せきや・いちろう 1990年東京医科歯科大学医学部卒業、2006年同大学大学院軟骨再生学助教授、11年同教授、13年4月から再生医療センター教授。50歳。東京都出身。

Q:膝が痛くなり歩行が困難になる変形性膝関節症とはどういう病気なのか

ーー大きく分けて膝の軟骨が摩耗して欠損する軟骨に原因がある場合と、膝の軟骨と軟骨との間にある三日月形のクッションの役割をしている半月板が損傷する場合の2つある。このうち約半分が半月板損傷関連だ。原因として一番多いのは加齢に伴うもので、過激な運動など外部要因により引き起こすこともある。変形性膝関節症の場合は軟骨の病気だが、半月板も傷んでいることが多い。

Q :軟骨と半月板損傷はこれまではどのような治療がされてきたのか

ーー軟骨欠損の場合は、一番普及しているのは、軟骨に穴をあけて骨髄から出血させることにより細胞を持ってきて修復する方法だが、きれいに修復できないなど限界がある。2番目が骨軟骨柱移植という方法で、膝の別の場所から軟骨を取ってきて移植する方法だが、広い損傷には対応できないなどの問題がある。3番目が正常な軟骨を取ってきて、体外で1カ月ほど培養して細胞を増やして移植する自家軟骨培養移植―の3つがあり、いずれも保険適用になる。

 半月板は加齢や繰り返しの外力で切れることがある。その治療は切れた半月板を切除してしまうか、縫合するしかない。半月板の手術は厚生労働省によると年間約3万件行われているが、9割は切除で縫合は1割しかない。半月板損傷に対して唯一の温存手術は縫合するやり方だが、再び断裂する可能性があるので普及率が低い。日本にいるとみられる2500万人の変形性膝関節症のうち少なく見積もっても半分は半月板に問題がある。

 半月板を切除してしまうと、最初のうちは良いが年数が経つと半月板がないため軟骨への負担が増えて痛みが出るなど苦労するケースが多く、効果的で負担の小さい治療法はないのが現実だった。欧米では死亡した人から半月板を取り出して移植する方法や、数は少ないが人工の半月板を移植する方法などがあるが、あまり良い成果が出ていない。

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著者

中西 享(なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

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